消費増税延期は7月選挙の弾みにならず
安倍総理にとっては、夏の選挙のために最大限の得点としたかったサミットでしたが、期待通りとはいきませんでした。
議長国としてのリーダー・シップは十分発揮したとはいえず、世界経済浮揚の道筋は得られませんでした。むしろ、いくつか“負の遺産”を残してしまった感があります。
まず消費税ですが、これまで野党が延期を求める中で、政府は「リーマン危機や大震災が起きない限り予定通り実施」としていました。それを急遽サミットを利用して、「リーマン危機前夜」を盾に再延期を決めたようですが、サミット会議では「リーマン危機前夜」は承認されませんでした。
それでも再延期となると、正当な理由がないなかでの政治判断、ということになります。
実際、金曜日の市場の反応も、消費税増税延期と報じられた割には、株価の反応は鈍く、リーマン危機前夜との認識が不自然ととられたり、かえって足かせになったりしたようです。
日本が率先して財政支出の拡大を打ち出す点についても、人手不足で供給制約がある中で適切な策かどうか、評価は分かれます。
財政出動とのセットにも“落とし穴”が
また、「アベノミクスを成功させる会」の山本幸三議員が、消費税増税と大型補正、歳出拡大をセットで打ち出したのは、米国から消費税増税を求められ、それをカバーするために歳出拡大を提案したと見られますが、ここで消費税再延期となると、米国でもCFR(外交問題評議会)との関係悪化が気がかりです。
そのCFRについては、せっかくオバマ大統領を広島に訪問させるようセットしたのに、沖縄問題でムードが悪くなり、それもあってか、オバマ大統領の記者会見は決してフレンドリーなものではありませんでした。
かつてCFRは米国のメディアをつかって「安倍降ろし」に動いたことがあるだけに、選挙に向けて、米国の動きには注意が必要です。自民党幹部のスキャンダル報道が使われることもあります。
このようにみると、夏の参院選挙は、内閣支持率が示すほど安泰ではないと見られます。野党が候補者の一本化を進めれば、自民党はかなり苦戦する可能性があります。北海道の補選がまさかの接戦になった経緯もあります。