神奈川県は県営水道の料金について、老朽化した施設の更新費用がかさむことなどを理由に、およそ25%の値上げが必要だとして、年明けに開かれる定例議会に必要な条例の改正案を提出する方針だと報じられている。
報道によれば、県は老朽化した施設の更新や自然災害への対策に多額の費用がかかるとして、去年3月に安定経営を目指し料金の改定などについて審議会に諮問。
その結果、現在の料金のままだと来年10月から2029年3月までの4年半の間にあわせて527億円の財源不足が見込まれるとして、およそ25%の値上げが必要との答申があったという。
神奈川県の黒岩知事は「安定的に水道水を届けるためには、戦略的な管路整備などを急ぐ必要があり、料金の値上げは避けて通れない。県民の皆様に負担をかけることになるが理解してもらいたい」と話しているという。
人口減や各家庭の節水も水道料金アップの要因に?
近年、各地で相次いでいる水道料金の値上げ。ここ直近の3年では、実に150の自治体が水道料金の引き上げに踏み切ったといい、埼玉県川口市では21年に今回の県営水道と同じく25%の値上げ、さらに福岡県飯塚市では22年になんと35%の値上げを行ったという。
そんな値上げの理由としてよくあげられるのが、老朽化した水道管の補修などの設備維持のためのコストの増大なのだが、そのいっぽうで深刻化しているというのが水需要そのものの減少。人口減やそれに伴う世帯減、さらに各家庭の節水努力などによって、水道料金として得られる収入が減っているというのだ。
そんななか、今回渦中となっている神奈川県の県営水道だが、県内の横浜市や川崎市などを除く12市6町に水を届けており、その事業開始は1933年と、市町村単位ではない県営広域水道としては、国内でも最古の歴史を持つという。
その利用者数は県民の約3割にあたる約283万人で、国内でも4番目に大きな水道事業者だということだが、いっぽうで給水面積が約808平方キロメートルと広く、給水区域内の人口密度が低いという“負”の地理的条件もあるという。
全国平均より安価だった県営水道の料金
水道料金といえば、全国の市町村ごとでその料金に実は大きな差が存在し、なかでも“日本一安い水道料金”との呼び声も高いのが兵庫県赤穂市。家事用10立方メートルあたりの水道料金では、全国平均が1,597円のところ、赤穂市は374円(2021年4月1日現在)というデータもあるなど、かなり格安に抑えられている。
これは市内を流れる千種川の水量が多く、さらに地下水も豊富ということで、とにかく水には困らない環境である点、さらにその水も名水と呼ばれるほどキレイということもあり、1か所の浄水場で賄えるということも、設備投資を最小限に抑えられる要因となっているようだ。
そのいっぽうで、水道代が比較的高くなる傾向にあるのが北海道の市町村で、自治体によっては全国平均の倍ほどになることも。これは給水区域内の人口密度が低くなりがちである点にくわえ、防寒対策や凍上防止等で水道管などの建設コストが割高になることが、料金に転嫁されてしまうからだという。
そんななか神奈川県の県営水道の水道料金はというと、神奈川県のウェブサイトによれば、家事用20立方メートルあたりの料金は2,509円とあり、全国平均の3,301円よりも800円近く安価であるとのこと。仮に、今回取沙汰されている25%の値上げが実施されたとしても、全国平均かそれよりもまだ低いといった水準のようなのだ。
25%はエグいって…
県営水道料金 25%値上げの答申に黒岩知事が理解求める 神奈川(tvkニュース(テレビ神奈川))#Yahooニュースhttps://t.co/kDTja8WSiB
— 泡沫 (@utakata710) November 9, 2023
県営水道料金 25%値上げの答申に黒岩知事が理解求める 神奈川(tvkニュース(テレビ神奈川))#Yahooニュースhttps://t.co/aSykPCMQa1
水が高くて死ぬ時代に突入か❨泣❩…。
— 秀虎 (@DFHkHMoX9WNwwt2) November 9, 2023
黒岩知事の「神奈川県営水道料金25%値上げ」は、水道民営化(外資売り)への布石なのか?
— Ave Annabel (@AveAveannabel) November 10, 2023
今回の25%の値上げに関しては、その値上げ率の高さもあって、異論を唱える声が殺到しており、果ては「民営化への布石か」といった憶測も出ている状況。ただ、もっと計画的かつ段階的に価格を見直すことはできなかったのかという話はおいとき、持続可能な水道サービスを実現させるためには致し方ない出費……との見方もできそうである。
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