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高齢者が金づるに…ブラック介護付有料老人ホームが乱立する理由。格安施設ほど“5つの虐待”が横行している=神樹兵輔

要介護者への「虐待」が増え続けている

そして、たびたび問題になるのが、要介護者への虐待です。厚生労働省によれば、虐待は5つの種類に区分されます。

<1. 身体的虐待>

高齢者に対して暴力的行為や、やむを得ない場合以外の身体拘束、行動や言動の制限、強制的行為など。介護施設での虐待事例では、殴る、蹴る、叩く、つねるなどの暴力行為があります。

この他にも、外部との接触を遮断する。ベッドや車いすへの縛り付け。薬の過剰服用。言葉による適切でない身体拘束.抑制。排泄の失敗をした高齢者に対しお尻を叩くなども「身体的虐待」に当たるとしています。

<2. 介護放棄(ネグレクト)>

日常生活で必要な介護や生活の世話を放棄、放任し、生活環境や身体.精神的状態を悪化させるケースです。

介護施設での虐待事例では、入浴や整容などを行わず、異臭や皮膚を不衛生なまま放置する。水分や食事を十分に与えず、脱水や栄養失調の状態にする。汚物を室内に放置したまま劣悪環境で生活させる。ナースコールの放置や届かない場所にスイッチを設置する。必要な介護、医療サービスを理由なく制限するなどが「介護放棄」に当たるとしています。

<3. 心理的虐待>

高齢者に対して暴言・威圧・侮辱・脅迫・無視、拒絶的な対応をしたり、その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うことを「心理的虐待」としています。

介護施設での虐待事例では、怒鳴る、悪口を言うなどの暴言、威圧的な態度、言葉の暴力がこれに相当します。また、誹謗中傷、無視、嫌がらせ、侮辱的に子供のように扱ったり、排泄の失敗などを失笑するなどが「心理的虐待」に当たるとしています。

その他にも、入浴時に下半身をいたぶる「4. 性的虐待」や、本人の同意なく財産を不当に処分したり、着服したり、詐欺的手法で利益を得たりする「5. 経済的虐待」などが挙げられています。

厚労省の調べでは、介護施設や居宅サービス事業所での高齢者虐待事例は2019年度で、特別養護老人ホームが190件(29.5%)で最も多くなっており、次いで有料老人ホームが178件(27.6%)、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)が95件(14.8%)、介護老人保健施設が72件(11.2%)などと発表されています。

しかし、これらはあくまで発覚事例で、氷山の一角でしかない――という識者の指摘も少なくないのです。

2019年度の被虐待高齢者1060事例のうち、身体的虐待が637人(60.1%)、心理的虐待が309人(29.2%)、介護等放棄が212人(20.0%)となっており、虐待による死亡事例も4件報告されています。

なぜ介護付有料老人ホームでは「虐待」が多いのか?

2019年度の厚労省の調べでは、介護施設で虐待が起こる理由を、以下のようにまとめています。

・「教育・知識・介護技術等に関する問題」が366件(56.8%)
・「職員のストレスや感情コントロールの問題」が170件(26.4%)
・「虐待を助長する組織風土や職員間の関係の悪さ、管理体制等」が132件(20.5%)
・「人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ」が81件(12.6%)

厚労省では、高齢者虐待には様々な要因があるものの、被虐者の心身の状況も虐待に大きな関連があるとしています。

・要介護度3以上の者が803人(75.8%)
・認知症日常生活自立度2以上の者が804人(75.8%)
・要介護認定者のうち障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)A以上の者が610人(57.5%)

ちなみに2番目の認知症日常生活自立度2とは、「日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる」というレベルの状況の高齢者のことです。

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