不動産投資は「借金ダルマ」でスタートすることがほとんど
その結果、本屋さんに行くと「不動産投資本コーナー」まで生まれ、「サラリーマン大家さんになろう!」「家賃年収1億円のギガ大家さんの成功術!」「老後資産は不動産投資で作ろう!」「不動産投資は生命保険代わりになって有利!」「不動産投資で35歳でFIREを実現した!」「年収300万円のOLの私でもできたアパート経営!」「中卒・工場勤務の私が不動産投資で家賃年収5千万円を実現!」などなど、さまざまな惹句が書籍カバーに咲き乱れるようになったのです。
総じて「家賃年収1億円」とか「家賃年収2億円」とかの年間家賃収入自慢が多いのです。
しかし、投資をスタートして10年に満たない人の場合は、総資産3億円で家賃収入が4,000万円などと言っても、バランスシートの右側の貸方には、2億円台とかの負債が記載されていることが多いでしょう。
つまり、資産の多くが借金なのですが、この時点で残債2億4,000万円の人の場合でも、「投資額3億円-残債2.4億円=6,000万円」ですから、投資歴10年で6,000万円の純資産を築いた――といえないこともないわけです。
不動産投資は、時間を味方につけて、徐々に規模拡大を図っていけば、家賃収入で借金を返し、キャッシュフローも得ることができる――という仕組みだからです
「無から有を生む」という形にも近く、「貧乏サラリーマンから資産家になれる可能性」という意味では、非常に面白い投資ともいえるわけです。
不動産投資で「借金だけが残って大損した人」も大勢いる
しかし、一見カンタンそうに見える不動産投資ゆえに、またカンタンに短期間に成功しているように見える不動産投資ゆえに、大損する人もあとを絶たないわけです。
不動産投資は、借金がゼロになって、純資産が〇億円、〇千万円となってはじめて成功といえるものです。
借金がある以上、相当残債が少なくないと「成功」とはいえません。
2018年には、シェアハウスブランド「かぼちゃの馬車」シリーズで、あこぎな詐欺商法で稼いでいた(株)スマートデイズが破綻して、共謀ともいえるタッグを組んでいたスルガ銀行を巻き込んだ騒動も記憶に新しいところです。
その後「かぼちゃの馬車」事件は、非常に有能な弁護士が先導して「詐欺」を立証したこともあって、スルガ銀行から契約を無効にして、投資被害者の借金をチャラにしてもらうという「ウルトラC級」の事件解決を見ました。
しかし、こんなことは稀であり、スルガ銀行絡みでは、他のアパートやマンション投資において、「騙された」という被害者も多く、いまだ完全解決に到っていないという悲惨な事例もあるようですから、騙されたとしても「被害救済」はなかなか期待できないのです。
不動産投資は、基本的に事業投資であり、自己責任だから、泣きついても相手にされないことが多いのです。
業者は物件を売ったら終わり、金融機関はカネを貸したら終わりで、責任は投資家本人にすべて回ってきます。
属性がサラリーマンだからといって、騙されたからといって、いちいち「消費者」としての保護には値しないからです。
その点、よほど慎重に考えてから投資しなければならないのです。
「サラリーマン大家さんブーム」に乗って、安易に不動産投資に乗り出して失敗する人も少なくないわけです。
不動産投資は、レバレッジが大きいゆえに、失敗したら何千万円、何億円もの大損害が生じます。
失敗は許されないことと肝に銘じるべきなのです。