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日本はマジでヤバい。金融リテラシーが低すぎる…投資教育が国を潰す理由とは?けんすう・田内学【特別対談】

「投資する」より「投資される」側のことを教育すべき

田内:投資に関しては、日本はマジでヤバいと僕は思っています。投資の勉強をするとなったら、資産運用の話ばかりをするんですよ。高校生への金融教育も始まりましたが、先生はお金に関する知識が少ないから銀行の人を呼ぶそうです。そうすると投資が大事だと言って、金融商品の説明を始める。でも、さっきの漫画家への投資もそうですけど、投資家がお金を払っただけじゃいい作品は生まれない。お金を受け取った人たちが「こういう作品があったら楽しいよね、こういう物やサービスがあったら便利になるよね」って考えて、世の中の問題を解決しようと挑戦する。挑戦する人がいるから社会は成長していく。それが投資なんですよね。みんなが株を安く買って高く売ることだけを考えても仕方ない。しかも株は元の株主から買っているだけに過ぎないのがほとんどですからね。投資されたお金を受け取る側を育てなければ意味がないのに、若い人に投資される側になって頑張ろうよと言わずに、投資する側になることだけ教えていいのかと疑問に思います。

けんすう:めっちゃそれは同感です。投資を受け取って、その資金をいかに上手に使ってより価値を高めるのか。そういう内容を高校生に教えた方がいいはずなんですよ。お金を使う側を教わっても、彼らはそもそもお金がないからあまり意味がないはずです。

もしも資産運用について教えたいなら、金融資本だけじゃなくて、社会資本とか人的資本みたいな話をした方がいいかなと。金融資本の運用の仕方だけで閉じがちですが、高校生が一番持っているのは体力や時間なので、それを使っていかに価値を最大化するかという教育をした方がいいと思います。アルバイトとか固定で決まった仕事でお金を稼いで、そのお金を金融資産で運用するみたいな教育の内容はめっちゃ偏っている感覚はありますね。

田内:今の状況は相当やばいですよ。日本の金融リテラシーが低いと言われるのは、こういうところだと思うんです。例えば、Googleはもともと「今の情報検索はめちゃ不便だろ。便利なもの作ろうぜ!」ってスタンフォード大学の生徒が集まって開発したサービスなんですが、仲間だけ集めてもサーバーとかお金がないと手に入らないものができてきた。「じゃあ、お金を集めよう!」となり、投資を募ったわけですよね。ところが日本の教育だと、やりたいことを叶えるために、まずはバイトでお金を貯めよう。そして投資する側に回ってお金を増やそうと考えちゃいます。

あ!そうだ!けんすうさんは課題設定をすれば、その解決方法を見つけるのが上手いから、この解決方法を考えてくださいよ。「投資される側になるという選択肢を日本の高校生に知ってもらうためにはどうしたらいいか?」

けんすう:まず最初に、お金は投資で集められることをほとんどの人は知らないかもしれないですね。例えばやりたいことが見つかったときに、500万円ぐらい集めてやろうという発想が日本の学生にはあまりないんですよね。でも、お金はめっちゃコモディティ化されていて、死ぬほど世界に余っているから簡単に集められるんです。みんなが投資したいと思っていて、集めるのは凄く簡単なはずなのに、みんな無理だと思っているところが日本と海外のギャップなんでしょうね。

田内:そうですね。本当は投資したい人だらけですよね。

けんすう:投資したい人だらけだし、大学生が3000万円ぐらい集めるとか、起業家界隈ではしょっちゅうあるわけです。「お金の集め方なんて知らない!」と思うひとも多いと思うんですが、経験がない人でもみんなエンジェル投資家に連絡して教えてもらっていたりするんです。大体相場はこうだよとか、これ作るといいよみたいな感じで。

大事なのは「投資を受けることでお金がない自分でも挑戦ができるんだな」ということを知っていることと、そんなに敷居高くなくできるんだな、と思えることかなと思っています。

スタンフォードの学生は起業するような人ばかりが周りにいますし、先輩が億万長者になっている例もあるから、学生は自分でもできるんだと思うらしいんですよ。さきほどAmazonの1位を獲れないと思っている人と、編集者に聞いたら「全員取ってます」って言われた人たちは感覚が違うんですよね。

日本だと三木谷さんみたいなスーパー・トップ・プレーヤーしか思い浮かばないですが、周りの、自分とそんなに変わらない友達がガンガン成功していくのを見ていれば、楽勝なんだろうなと思うようになるはずです。

田内:日本の学生は、そもそもエンジェル投資家という存在を知らないかもしれません。それで、今回の僕の小説では、通称”ボス”と呼ばれるエンジェル投資家を登場させたんですよ。

けんすう:小説ではボスがエンジェル投資家でしたよね。僕は早稲田大学の起業家講座を毎年やっていてエンジェル投資家について講義をやったりするんです。

そこで「この場で300万円を出してくれと言った学生全員に300万円を出してあげます。外れない宝くじです」と伝えても連絡してくる人はほとんどいないんですよ。当然、ただ単に「ください」は駄目だけど「これをやりたいんです!」というビジョンを言ってくれれば300万円をあげるのに、誰も言いに来ないのが面白い。たぶん怖い気持ちがあるんだと思います。でも、なぜ怖く感じるかというと答えはシンプルで「なんでお金が動くのかが理解ができていない」だけだと思います。

エンジェル投資家の仕組みを理解して、投資家はただ優しくて渡しているわけじゃないという話を理解すればいいんですけど、学生はそもそもリテラシーを持っていなくてわからないんだと思います。

田内:確かに。そこがわからなくて怖くなってしまうのか。

けんすう:やっぱり、どう使うとお金が増えるのかではなくて、どうやって価値を増やすのかという教育をやるのが重要だと思います。

田内:お金は使ったとき、つまり減ったときに、自分が嬉しいじゃないですか。だけどお金を増やすことが目的のようになっちゃっている。これはゲームで刷り込まれているのが原因かなと考えたんです。「マリオ」や「人生ゲーム」でもコインやお金をたくさん集めた人が勝ちというルールになっていますよね。

けんすう:確かに「桃鉄」でもそうですね。

田内:人生ゲームに至っては死ぬときですからね。評価が決まるの。

けんすう:確かに変ですね。死んだときにお金が一番多かったやつが勝つのは意味がわかんないです。普通は負けですよね。

田内:正月になる度に人生ゲームをするじゃないですか。お年玉をもらって人生ゲームをしちゃうから、このお年玉を増やすことが自分の幸せだと勘違いしちゃうのかな。

けんすう:貯蓄を推奨した戦前の日本が良くないですね、これは。

田内:一方で貯めたお金を何に使うのか? インスタを見ていると、すごく高いブランド物のバックや時計、高級車とかに使っていますよ。見せびらかすために自慢できる高い物にお金を使うことぐらいしか頭に浮かばないのかな。

けんすう:寄付するとかプレゼントする方が喜びは大きくなるはずですよね。やっぱりお金に関するリテラシーの低さは、日本の問題だろうなと思います。

田内:金融リテラシーが低いから教えようという風潮になってきてますが、教える人が銀行や証券会社の人だから、金融商品を買う話に偏っているんですよね。でも、日本は利回りが低いんです。なぜ低いかといえば、新しいことに挑戦する人が少ないから。新NISAが始まりましたが、投資マネーの多くは海外に流れていっている。新たに第2第3のiPhoneみたいな製品が開発されて、生活は便利になるかもしれないけど、日本企業にお金は流れずに海外の製品を利用するという現象が、今後もきっと起きちゃう。マジで危機感を持っているんです。日本は大丈夫かなと──

この続きでは、
◆お金は関係性を媒介するもの
◆「音楽」「VTuber」、世界進出目前の日本産コンテンツ
といった内容もご紹介しています。
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