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日経平均4万円超えで起きている日本人のメンタリティの変化。実体経済は停滞も、未来に希望が見える理由=高島康司

日本は捨てたものではない?水面下で進む変化

いまバブル期の最高値を上回る高株価が実現されようとしているものの、日本経済の慢性的な停滞を構造化している悪循環はなくなったわけではない。政府が主導して大幅な賃上げを実現させようとしているが、物価の上昇に賃上げは追いつかず、相変わらずの低賃金状態と個人消費の低迷が続いている。

2期連続のマイナス成長が続き、すでに景気後退に入っているが、これは、この慢性的な悪循環の構造が現在も変化なく続いていることを示唆している。

内部留保金の再投資、研究開発投資の後押し、人への投資の活発化などが叫ばれ、政府もその方向性に沿った政策を実施しているが、この構造がそう簡単に変わるとは思えない。これから日本経済に多少の伸びがあったとしても、停滞構造を一挙に変えるものではない。多少の変化があったとしても、実体経済の慢性的な停滞はこれからも続くと思って間違いないように思う。高株価と実態経済の低迷が一緒になって継続する状況がこれからも続くだろう。

しかし、まったく異なった視点からこの停滞構造が続くいまの日本社会を見ると、異なった変化が見えてくる。これは毎月筆者が行っている「ヤスの勉強会」でも指摘していることだが、継続する停滞の中でも日本社会の水面下の変化が加速しているように見えるのだ。

その変化とは、静かな落ち着きのある社会への移行である。

ちなみに、バブルの崩壊後で日本が最悪な時期であったのは、「リーマンショック」の金融危機がまだ継続していた2009年ころだったと言われている。この年は政府が非正規労働者の正社員登用を促進するために、3年を越えた雇用契約を結べなくさせた年だった。労働コストを引き上げるとして、非正規の正社員化を嫌った企業は一斉に派遣切りを実施した。この結果、日本のどの大都市にも、社員宿舎を追われ、行く当てのない労働者が溢れた。彼らを保護する派遣村が各地にできたものの、対応は間に合わなかった。金融危機が引き起こした不況とあいまって、完全失業率、犯罪率、ホームレス数なども一気に増加した。社会全体の荒廃が肌で感じられる状況だった。

しかしいま、この時期から比べると、日本の社会はあらゆる点で改善しつつある。

以下にそれを示す数値のいくつかを示した。2009年前後の最悪だった年を比較対象にした。

<全国ホームレス数>

2007年:1万8,564人 → 2023年:3,065人

<子ども貧困率>

2012年:16.3% → 2021年:11.5%

<刑法犯総数>

2009年:171万3,832件 → 2022年:60万1,331件

これは非常に大きな変化だ。これとともに増加しているのが、NPO法人だ。さまざまなNPO法人による社会サービスの提供が、社会状態の改善に貢献していると見て間違いなさそうだ。

<NPO法人数>

2011年:198件 → 2023年:1,283件

もちろんこれらの変化には、政府による支援策の強化があったことは間違いない。

慢性的な停滞の中で起こるメンタリティの変化

これらはほんの一部の数値だが、それでもこの十数年で日本社会が静かになり、落ち着いた社会になりつつあるのが分かる。コロナのパンデミックによる一時的なより戻しはあったものの、社会状態の改善のトレンドはそのまま続いている。海外からの旅行者が日本の社会環境のよさに引き付けられて多数やってくるのもよく分かる。社会インフラが整い、安全で安心できる日本というイメージなのだ。

このような、慢性的な停滞の中の高度な安定状態で、我々日本人のメンタリティも大きく変化していると見てよいだろう。すでに「ヤスの勉強会」でも指摘したが、おそらく多くの日本人は競争的な資本主義の原理による成長モデルを拒否した可能性が高い。

Next: 日本人のメンタリティはどう変わった?より落ち着いて成熟した社会へ

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