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日経平均4万円超えで起きている日本人のメンタリティの変化。実体経済は停滞も、未来に希望が見える理由=高島康司

バブル期の高騰とは明らかに異なる構造

このような状況であるにもかかわらず、日本の株価が好調なのは、
1. 海外投資家の日本株買い
2. 中国経済の低迷
3. 半導体や自動車など一部産業分野の好調
…などの背景がある。

まず(1)だが、バブル期の90年には5%程度だった海外投資家の割合は、現在では30%を越えている。社会不安などで不安定化しつつある欧米に比べ、停滞しつつもインフラが整備された、安全と安心が得られる日本が資産の保全先として海外投資家に好まれているのだ。

また(2)だが、中国経済の低迷により、かなりの資金が日本株に流れるようになっている。

そして(3)だが、半導体の原材料や製造機器、そしてIT関連部品、さらに自動車などの分野が伸びているので、投資が集中している。

こうした理由を見ると、現在の高株価の状態は海外投資家の存在を始め、外部の要因によってけん引された外在的高騰ともいえるようなもので、日本の実体経済の成長がけん引する内在的な高騰ではないことが分かる。

ちなみに、不動産価格と株価の高騰だけに目が奪われるが、1986年の「プラザ合意」から始まり、1991年の前半には終わったバブル経済期の成長のけん引力となったのは、ハイテクを始めとした先端産業の旺盛な設備投資であった。記憶にあるかもしれないが、日本の80年代はCDプレイヤー、ビデオデッキ、レーザーディスク、大画面テレビ、コンピューターなど家電を中心とした新しいタイプの耐久消費材が市場に溢れた時代だった。こうした新製品を可能にしたテクノロジーの研究開発、そして新製品の生産のための膨大な設備投資が積極的に行われた時期だった。

巨額の設備投資は周辺産業に波及効果をもたらして労働力の需要を増大させ、それが賃金を上昇させた。これは国内の個人消費を増大させ、好景気を作り出した。この好景気による企業業績の伸びが、高い株価に反映したのである。これはまさに、実体経済の伸びがけん引する内在的な条件による株価の上昇だった。

現代の日本は慢性的な停滞構造

しかしいま、株価がバブル期の最高値に近くなっても、バブル期に存在した実体経済の成長を実現する内在的な構造は存在しない。むしろ、いまの日本にあるのは、停滞を慢性化させるような負の構造である。

88年の「日米構造協議」から始まり、91年の「第2次日米半導体協定」に至るアメリカとの一連の協定により、日本は「日の丸半導体」を中心とする先端的なハイテク産業の輸出には大きな制約がかかり、世界最大の市場であるアメリカに思うように輸出できなくなった。先端的産業分野の利益は落ち込んだため、多くの企業は先端技術への研究開発投資を抑制し、家電向けのローテク製品の半導体や部品に特化していった。その分、設備投資も大きく減退した。

また多くの大企業は、系列や下請けの企業に製品価格の値下げを迫り、自分の利益だけは確保する体制にした。そして確保した利益は、新製品のための新しいテクノロジーの研究開発には再投資せず、内部留保金として得た利益を蓄えた。

内部留保とは、正しくは「利益剰余金」という。最新の厚生労働省「法人企業統計調査」の結果によれば、2022年の「利益剰余金」の額は554兆7,777億円と、2021年度(516兆4,750億円)に続き、過去最高を更新した。高株価の背後で、内部留保金の額が積み上がっているのだ。内部留保金は、再投資されるための資金ではない。企業の資産としてただ蓄えられている資金である。

これが大きくなるにしたがって、慢性的な停滞を構造化するような次のような悪循環が形成された。これは 当メルマガ 当メルマガ 第713回の記事で書いたが、再度確認する。

イノベーションと開発投資の不在

国際競争力の低下

売り上げの減少

賃金を低く抑える
中小企業に値下げを強要

経常利益の確保

内部留保金として蓄積
役員報酬の増額

イノベーションと開発投資の不在

【関連】日本人を貧乏にしたのは大企業。カルト教団だけでなく「お友達企業」と自民党の癒着も清算させるべき=高島康司

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