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「EVはオワコン」は本当か?航続距離ほか8つの弱点を克服しつつある中国。乗り遅れると日本勢こそオワコンに=牧野武文

レベル5の完全自動運転を目指したApple

2015年、腕時計をしない人が増える傾向が進んでいる時代に、Appleは「アップルウォッチ(Apple Watch)」を発売しました。そして、腕時計としては驚異的な売れ行きを示しました。アップルウォッチは腕時計の形をしていますが、腕時計とは別物で、それがねらいなのです。

アップルカーも同じように、EVには見えるけど、EVとはまったく別物という線をねらっていたはずです。「EVが売れていないからやめよう」などという発想はしないと思います。

Appleのプロジェクト・タイタンはベールに包まれていて、その中身は誰にもわかりませんし、断念をした理由も誰もわかりません。しかし、報道から推測すると、EVということよりも自動運転の開発に行き詰まりを感じたようです。

ティム・クックCEOは「自動運転技術が最も重要な根幹の技術であり、すべての人工知能プロジェクトの母だ」とコメントしたことがあります。つまり、AppleはアップルカーでAI人材を獲得し、そこからさまざまなAIプロジェクトを派生させようと考えていたようです。

Appleがやるのであれば、ハンドルもペダルもない、レベル5の完全自動運転(L5自動運転)を目指したはずです。車というより、動く部屋でなければインパクトがありません。しかし、L5自動運転は技術的に無理なのではないかという見方が一般的になってきています。

L5自動運転は砂漠やジャングルといったオフロードでも自動運転走行できなければなりません。オート三輪や歩行者が交通法規も守らずに飛び出してくる中国やインドの裏町も自動運転走行できなければなりません。あらゆる環境に対応できる完全自動運転というのは無理なのではないかと考えられるようになっています。

Appleが断念をしたのは完全自動運転であってEVではない

一方、「条件つき自動運転」であるレベル4の自動運転はすでに実現できています。例えば、高速道路だけであるとか、キャンパスやマンション、公園などの閉鎖区域内であるとかです。また、シャトルバスのように固定ルートを走行する場合も実現できています。あらかじめ道路条件が限定できるため、ハンドルをなくした完全自動運転ができるわけです。

おそらく、Appleはここを悩んだのではないでしょうか。アップルカーが、遊園地の乗り物のように限定された区域しか走行できないものになるのか。どこでも走れるようにしようとするとハンドルをつける必要がある。どっちを選ぶべきなのかという議論が内部でされていたことでしょう。

実際、断念報道の前には、L5自動運転を放棄して、テスラやファーウェイと同じL2+自動運転(人間が運転の主体となる自動運転)に方針転換をするのではないかという観測報道もありました。

しかし、ハンドルとペダルがある一般的な自動車では、Appleのブランドイメージやミッションにそぐわないのだと思います。そこに莫大な資金を投じることは意味があるのかという話になり、だったら、最初から現実性のあるAIプロジェクトに直接投資をした方がいいということになったのではないかと思います。

Appleが断念をしたのは完全自動運転であって、EVであるかどうかは問題ではなかったと思います。

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