近頃また競争が激しくなっている感があるフードデリバリー業界。出前館<2484>は言わずと知れた日本を代表するフードデリバリー企業(創業1999年)。今回は、変革期にある出前館について、筆者が「買い」と考える理由と乗り越えるべき課題について解説する。(天野博邦)
プロフィール:天野博邦(あまの ひろくに)
作家、投資家、経営コンサルタント。1982年山梨県生まれ。東北大学大学院卒(量子情報理論)。金融・コンサルティング業界を経て、2024年に独立。海外勤務の経験から主に欧米企業の企業分析が得意。日本をいかにより良い国にできるかをテーマとして執筆活動を行っている。
なぜ今「出前館」か
出前館について、あなたはどんなイメージをお持ちだろう。
- 「フードデリバリーの会社でしょ?」
- 「ユーザー数が減っているらしい」
- 「赤字という報道を見た気がする」
この3つの問いに対して、「Yes」か「No」かは慎重に考える必要がある。
(1)については、飲食品に加えて今後は医薬品や日用品なども宅配する。
(2)については、ユーザー数はピーク時より減っているものの、コロナ以前と比べると増えている。また今後はYahooとLINEの顧客基盤を活用するため、ユーザー数は増える可能性が高い。
(3)については、実は赤字は縮小傾向にあり、黒字化も視野に入ってきている。
今回「出前館」を取り上げる理由は、ズバリ「買い時」だと筆者が考えるからだ。
出前館は「今が買い!」と言える3つの理由
<理由その1:第二の創業期>
筆者は企業の将来性をチェックするときに、その企業の「採用情報」を確認する。採用情報において欠かせないのが、どんな人物像を求めているのかの記載だ。出前館にはそれが明記されている。そして、募集ポジションによっては、参考情報へのリンクが貼ってある。例えば「コーポレートIT」の募集ページには、エンジニアブログが紹介されている。また「経営企画」の募集ページでは、CEO・CFOからのメッセージ…といった具体だ。
採用ページのCEOメッセージには「出前館、第二章のスタート」と書いてある。
※参考:株式会社出前館 採用情報
出前館は現在、LINEとの業務提携により「第二の創業期」と言っても過言ではないフェーズにいる。デリバリーサービスをリードするために、プロダクトの大幅リニューアルや新規開発が進行中だ。
出前館は従来のフードデリバリーにとどまらず、今後は「クイックコマース」として進化することを掲げている。テクノロジーの力で社会の変化(ニーズ)に合わせて様々な商品を即日配達するということだ。出前館が目指しているのはクイックコマースでトップに立つこと。それは爆発的な成長を意味する。
<理由その2:エコシステムの活用>
出前館はLINEヤフーの傘下にある。今後はLINEとYahooの顧客基盤を使う予定で、競争相手との差別化になる。
これはユーザー数を増やして売上を伸ばすことにおいて当然重要だが、加えて、マーケティングの費用対効果が大きいと筆者は見る。
営業利益が赤字である理由の1つには、マーケティング費用がかさんでいることが挙げられるだろう。LINEヤフーという最強のエコシステムの中で、費用を抑えつつ顧客を取り込む施策はあるはずだ。
また人材面でも、グループ会社から出前館へトップクラスの人材を送りこみ、変革にドライブをかけて課題の解決を加速させるべきだ。
LINEヤフーとしても、LINEとYahooというデジタルが主戦場のデータソースに加えて、出前館というリアルの世界でのデータを集めてグループのシナジーを高めることが重要だ。