2000年代になって貯蓄額が減ったのは、可処分所得が減ったために貯蓄余力が減ったためとみられます。
2001年から2017年まで名目の可処分所得は年間300兆円を割り込み、この所得減少が貯蓄減をもたらしました。その後可処分所得は徐々に持ち直し、年間300兆円台を回復し、さらに2020年のコロナ禍で消費が激減、2020年度の貯蓄は一気に37.6兆円に急増しました。
特にコロナの恐怖がピークに達した2020年4-6月には年率72兆円の大幅貯蓄が発生、その後も消費の抑制が続き、21年度も約20兆円の貯蓄が発生、世の中ではコロナ禍による「強制貯蓄」が50兆円以上発生し、その後の「リベンジ消費」の源泉と期待されました。
ところが、2023年度にはすでに貯蓄ゼロの状況に落ち込み、新たな貯蓄余力がなくなるとともに、物価高による貯蓄の目減りで余剰貯蓄がなくなりました。
減税は貯蓄に向かう
このように、貯蓄余力がなく、物価高で所得、資産両面から購買力が圧迫され、家計のバランスシートが悪化する中では、政府が今回行った物価高対策の一環による特別減税、および非課税世帯への給付金は、かつないほど貯蓄の補填に回りやすくなっています。
もともと、恒常所得仮説にあるよう、一時的な所得の増加は消費より貯蓄に回りやすいのですが、今日の家計の苦境においては、より貯蓄に向かいやすくなります。
政府は新たな物価高対策を講じる意向のようですが、物価高を直接抑えるものでなく、給付金や減税策となった場合、今日の家計の「貯蓄枯渇状態」からみると、対策の多くが貯蓄補填に回る可能性があり、景気対策というより、家計の不安軽減策ということになりそうです。
バランス改善の3つの方法
この家計の苦しい状況、バランスを改善するには、以下の3つのルートがあります。
1つは、企業が労働の再生産を拒むような人件費の抑圧をやめ、労働者に物価をカバーできる賃上げを実施することです。労働者を過度に抑圧すれば、モラルの低下も含めて、却って企業にはマイナスとなる可能性に注意が必要です。






