物語コーポレーションが中国で展開し始めた“日本版ハンバーグ”専門店が、現地で人気を博すいっぽうで、早くも見た目やロゴがそっくりな“丸パクリ”店が続々と出現していると報じられている。
話題となっているハンバーグ専門店「肉肉大米」は、2年前に上海でオープンすると瞬く間に店舗数を増やし、今では中国国内に15店舗まで拡大しているとのこと。中国ではミンチ肉に対しての信用度が低いなか、同店では牛100%の粗びきで、できるだけ混ぜ物がない肉を提供していることをアピールしたことが、食の安心・安全を気にする現地の中国人に受け入れられたという。
本家の店では1時間待ちの大行列となることもあるというのだが、その反面で人気にかこつけたパクリ店も出現。なかには看板に、炊き立てごはんならぬ“焼き立てごはん”というおかしな日本語が使われた店もあるなど、物語コーポレーションによればパクリ店は少なくとも13ブランドに及んでいるとのことで、同社では目下、商標の申請を行うなどの対策に追われているということだ。
日本で人気のハンバーグ店のスタイルを“輸出”
今回の報道で取り上げられている“日本版ハンバーグ”だが、具体的にはオープンキッチンで炭火焼きされたハンバーグを、カウンターの客に炊きたてのご飯などとともに提供するといった店。
2020年に東京・吉祥寺で開業したとある店がやり始めたという、この手のスタイルのハンバーグ店は、日本国内でも瞬く間に広がり、昨今では“ハンバーグ第4次ブーム”などとも呼ばれているほどの盛況ぶり。
日本においては、炊きたてほかほかご飯の上に乗る肉汁したたるハンバーグのシズル感にくわえ、客の目の前でハンバーグが炭火で焼かれるライブ感が大いにウケた、この手の業態なのだが、中国においてはそのライブ感が“提供される食材への安心感”に繋がるという、意外な支持の集め方をしているようだ。
そんな日本でも人気となっているハンバーグ店の新たなスタイルを、中国に向けていわば“輸出”したのが、今回取り上げられている「肉肉大米」ということなのだが、運営しているのは言わずと知れた物語コーポレーション。
焼肉食べ放題の「焼肉きんぐ」にくわえ、ラーメン店の「丸源ラーメン」といった、ともに日本国内で快進撃を続けている2つのチェーンを擁する同社だが、昨今の飲食業界といえば客単価の上昇がほとんど見込めなくなったジリ貧の日本市場よりも、消費意欲の旺盛な海外市場への進出を目指すというのが一種のトレンドとなっているところ。
そんななかで物語コーポレーションも多分に漏れず、海外への進出を志向しているようで、中国に進出した今回の「肉肉大米」にくわえて、日本国内にも店舗がある「焼きたてのかるび」をローカライズした「Yakitate KALBI」を、インドネシアに数店舗展開しているなど、国内のみならず海外市場の席巻も目指して、着々とその地盤を固めつつあるといった状況のようなのだ。
消費減退で逆に日本企業にとっては好機到来の中国市場
このように海外への展開を狙う日本の飲食チェーンが増えるなかで、まずは近場にある巨大市場として魅力的な中国への進出を狙うといったパターンは実に多いのだが、実際に進出するとなるとかなりの困難を伴うようで、近年ではコロナ禍のタイミングに、居酒屋チェーンのワタミや吉野家ホールディングス傘下の「はなまるうどん」などがあえなく撤退。
また直近だと、今年7月には「モスバーガー」を展開するモスフードサービスが中国事業から退いたと報じられたばかり。ちなみにモスは、1990年代にも中国への進出を図ったことがあり、これが2度目の中国撤退になったという。
しかしその反面で、2022年に一度はうどんチェーン「丸亀製麺」の撤退を余儀なくさせられたものの、ここに来てラーメンチェーンの「ラー麺ずんどう屋」や、主に焼肉丼などを提供する「肉のヤマ牛」といった業態で、中国市場への再進出を狙っている、トリドールのような企業も。
そもそもトリドールは、2017年に買収したスパイシーヌードルの専門店「譚仔三哥(タムジャイサムゴー)」が、香港を中心としたアジア圏に200店舗以上展開するなど、海外事業がとても好調に推移しており、直近の売上高をみると、国内事業が1149億円なのに対し海外事業が886億円と、すでに全体のおよそ4割を海外が占めているとのこと。
また売上成長率でみても国内の12.5%に対し海外が44.1%となっており、数年後には国内と海外の売上構成比が逆転することが確実視されているというのだ。
そんななかで経済停滞で消費が伸び悩む中国では、このところは安くても品質の良い店に人民らの興味が向いているということ。トリドールや物語コーポレーションをはじめとした日本の飲食チェーンにとっては、まさに千載一遇のチャンスということで、中国への攻勢を強めているといった状況。
ただ物語コーポレーションに関しては、パクリ店の続出という、魅力ある市場であることの裏腹といえる“チャイナリスク”に直面する格好となってしまっているようだ。
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