fbpx

万博での商用運航はあえなく頓挫も「空飛ぶクルマ」実現への熱量がなぜか高い関西地方。大阪メトロが開発ベンチャーに出資&協業の動きも

大阪・関西万博で運航を予定していた「空飛ぶクルマ」だが、事業者が一般客を乗せて飛行する“商用運航”を見送る方向となったと報じられている。

空飛ぶクルマは、大阪万博のコンセプトである「未来社会の実験場」を実現する重要プロジェクトで、万博来場者の移動手段として会場内外をつなぐ飛行が検討されていた。

商用運航にあたっては、国の承認である「耐空証明」の取得が必要だったのだが、その前段階として機体メーカーが事前に得る予定だった、欧米での認証審査がかなり時間がかかっているということで、このペースでは万博の開幕までに国内で認証を取得するのは難しいと判断した模様だ。

パリ五輪でも実現しなかった商用運航

一般的に空飛ぶクルマと呼ばれるeVTOL(電動垂直離着陸)機は、電池とモーターでプロペラを駆動させ、垂直にも水平にも移動が可能。ヘリコプターよりも小さく、公園や鉄道の駅前などの比較的狭い土地にも離着陸がしやすいということで、「百年に1度の移動革命」につながるとも言われている。

関西万博においては、この空飛ぶクルマの国内初となる商用運航を行うことが、大きな目玉のひとつとして盛んにPRされ、実際に「ANAと米ジョビー・アビエーション」「日本航空」「丸紅」「スカイドライブ」という4つの企業グループが運航事業を担うとされていた。

しかし「丸紅」と「スカイドライブ」に関しては、2023年までの段階で相次いで万博開催時の商用運航を諦め、デモ飛行とすることを公表。

そのため、残る「ANAと米ジョビー・アビエーション」と「日本航空」の2社が、商用運航の可能性を今まで模索していたようなのだが、もっともANAホールディングスの社長も、23年12月の段階でメディアの取材に対し「お客さまを乗せて万博会場をぐるぐる(商用)飛行できるかというと厳しいと思う」とコメントしており、その時点でほとんど諦めムードだったようだ。

ちなみに空飛ぶクルマといえば、今夏に開催されたパリ五輪においても商用運航が計画されていたのだが、こちらもヨーロッパの航空安全機関からの認証を思うように得ることが出来ず、結局は頓挫することに。

このように今回の大阪万博に限らず、空飛ぶクルマの商用運航実現の前には、機体の型式証明や飛行許可の取得が高いハードルとして立ちはだかっており、その影響で実用化のスピードがかなり遅れているといった状況のようだ。

目玉コンテンツが無くなり最大の見どころは…

SNS上では今回の万博での空飛ぶクルマ断念との報道に対し、「やっぱり…」といった反応がほとんど。

デモ飛行でただ単に飛ばすのと商用運航とでは、実現への難しさが数段違うというのは素人目にもわかるところで、むしろそのことを良く分かっているはずの航空会社が参画していた企業グループのほうが、見送り決定への決断が遅かったことを疑問に思う意見もあがっているところ。

また、万博ならではの未来感を大いに感じさせるプロジェクトでもあった空飛ぶクルマの商用運航だったのだが、これが無くなってしまったということで、もはや大阪万博の目玉は例の“木製巨大リング”か、いや“吊り岩石”かと、どんどん内容が薄くなっていく様を揶揄する声も多い。

いっぽう、空飛ぶクルマの運行には当然離着陸場が必要だということで、すでに尼崎には約3千万円をかけて整備したものが完成しているということだったのが、今回報じられた商用運航見送りで、それらも単なる“税金の無駄遣い”に終わるのでは……との声も。

ただ、大阪万博での商用運航はナシになったものの、“大阪に空飛ぶクルマを飛ばす”という話がすっかり立ち消えしたわけでないようで、今年8月には大阪メトロが上記のスカイドライブ社への出資を発表し、両社で商用運航計画を進めることを表明。今後は大阪・森之宮地区に開業する大阪メトロの新駅周辺に、空飛ぶクルマの離着陸場を整備する予定だという。

東京都内においては、離着陸場の候補地を今年度内に4か所選ぶといったが浮上している段階に過ぎないのと比べると、大阪をはじめとした関西圏ではなぜかその熱量が際立って高いといった印象がある、空飛ぶクルマ実現への動き。上記の大阪メトロとスカイドライブによる計画では、2028年の商用運航開始を目指すということで、果たして今度こそは本当に実現するのかどうか、注目が集まるところである。

Next: 「万博全体が『中止せよ』に向かっている」

1 2
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー