経営統合のメリットは?
佐々木:日産とホンダの経営統合という話が出ていますが、ホンダにとって日産を経営統合するメリットって何かあるんでしょうか?
栫井:間違いなく言えることは、規模が大きくなれば販売台数が増えるのでその分売上ができて、研究開発は会社の大小にかかわらずやらないといけないので、規模の大きい会社の方が多くの研究開発費をかけられて時代についていけるということは確かにあります。ただ、シナジーというところを考えるとあまり思いつかないですね。日産のEV技術も正直遅れてしまっているし、ホンダも必ずしも持っているわけではありません。大きくなれば潰れにくくなることくらいですかね。
佐々木:スケールメリットはあるかもしれないですけど、シナジーが見えてこないですよね。そこから先の成長性とか、新しいものが生み出せるのかということは別の話ですね。
栫井:日産からしてシナジーが見込めるのはコストカットだと思います。これまで販売台数を減らしてきたのにその間リストラは行っていなくて、稼働していない工場もかなりあると思います。ホンダは日産に対して、ちゃんと人員整理等を行わないと経営統合のスタートラインに立てないということを言っています。日産の話を聞いているとまだ甘えがあるような印象ですが。
元村:今の一連の話を聞いていると、誰が何のために経営統合を進めているのかなおさら分からなくなってきました。
栫井:国の圧力があったのではないかという噂はありますよね。台湾の鴻海がルノーから日産の株を買うという話になったところでいよいよヤバいとなってホンダに泣きついた形かもしれないです。
日産株保有者の視点
佐々木:今日産の株を持っているという個人投資家の方もいると思うんですけど、その人たちはこの経営統合に対してどのように向き合っていけば良いのでしょうか。
栫井:この経営統合はそれほど大きな株価上昇を見込める話ではなくて、そもそも経営統合スキームはどちらかの株価を上げるスキームではないんですよね。あくまで両方の会社が横並びでくっつくというだけの話です。これがM&Aだったなら、今の株価に最低限30%のプレミアムをつけないと売ってくれないので、株価が上がりやすいです。しかし、経営統合の場合はそうはならず、株主にとっては必ずしもおいしい状況にはなっていないですね。
佐々木:となると、どうなったら良いんでしょうか?
栫井:これは、日産の経営陣や経産省にとっては望ましくないかもしれませんが、例えば鴻海が買ってくれた方が、あるいはもっと強烈な買収者が来てくれた方が良いということになります。買収合戦になるからです。今回、経営統合しますが、最終的には40%弱を持っている株主であるルノーがOKと言わないと成立しません。それに対して鴻海の方が高く買うという話になるとルノーはそっちになびいた方が良いですし、さらに他の買収者が出てきたら株価はつり上がっていきます。今回の話が動き出してしまった以上、日産の株主にとっては、株価のことだけを考えたら経営統合が成立しないか、一悶着二悶着あった方が良いわけです。
佐々木:業績やリストラの話ではなくあくまで経営統合と株価の観点ではということですね。
栫井:買収されたらその後さらにきついリストラをしなければならなくなると思いますけどね。でもきついリストラをすることがある意味で日本の自動車会社の足腰を強くすることになるかもしれないので、どちらが日本のためになるかは実は分からないところです。