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中野サンプラザ、建て替え計画が白紙に。“作っては壊す”旧態依然な再開発への反発が噴出する反面、現地はすでに廃墟化が進行中か

2023年に閉館した中野サンプラザ跡地の再開発事業を巡り、中野区は事業者である野村不動産らが示したツインタワーを建てるなどの、新しい計画案を受け入れないと表明。現在の枠組での再開発計画は白紙に戻ったと報じられている。

中野区は11日に区議会にて、事業者の現在の案について「中野区の顔となる特別な場所で進めていく提案としては、必ずしも十分ではないと判断した」と指摘。また事業者側から「事業収支は今後、変更の可能性があり事業の成立性を担保できない」といった説明があったことから、「事業成立性の見通しが明らかではない」としている。

中野サンプラザ跡地の再開発に関しては、野村不動産などの事業者が当初、7000人収容のホールや住宅やオフィスを備えた超高層ビルを建設する計画を立て、外部有識者による審査を経て、複数の事業者グループの中から同社案が採用。2021年に中野区と協定を締結していた。

しかし資材や人件費の高騰の影響で、工事費が想定を大きく上回ることが判明。事業者側はビルの高さを下げて工事費が抑えられるツインタワーにするなどの変更案を提示したものの、当初案から大幅な変更となったことなどから、このまま事業を進めることへの疑問の声が区議会などであがっていた。

建築資材の高騰による再開発頓挫が続出中

ウクライナ情勢悪化の影響にくわえコロナ下での需要急減からの揺り戻しもあり、ここ数年で歴史的な高騰が続いている建築資材。

このことが、各地で展開されている大規模再開発の頓挫・見直しに繋がるといったケースが、ここに来て増えているといった状況で、都内に限っても王子駅前の複合文化施設「北とぴあ」が、100億円をかけ大規模な改修を行う予定だったのが、改修費がほぼ倍増する見通しを受けて計画が撤回されることに。

また五反田のTOCビルも、24年3月末に一度は建て替えのために閉館となったものの、資材高騰を受けて建て替え予定を10年ほど延期することになり、同年9月にそのままの状態で営業再開となった、ある種のドタバタがあったことも記憶に新しいところだ。

そんななかで今回の中野サンプラザに関してだが、当初のプランではその事業費は約1810億円とされていたのだが、2024年7月に施行認可申請時には、折からの資材高騰を織り込み2639億円と設定。

しかし、その2か月後には事業者代表の野村不動産から、その価格からさらに900億円増えるという連絡があったとのこと。事業費が当初計画のほぼ2倍にまで高騰したということで、2024年10月には事業者側から施行認可申請の取り下げが行われる異例の展開となったのだ。

その後、野村不動産からは採算性を改善するために、住居部分を当初予定の4割から6割に増やすなどといった、当初案とはまるで別物といった新たな事業案が提案されていたようだが、これに関しては区民らから「単なるタワマン化」といった批判が上がるなど、計画は完全に迷走状態に陥っていたようだ。

音楽ファンからは建て替え白紙を歓迎する声も

今回、中野区が計画の“白紙”を表明したことで、当初は2028年度内とされていた新施設の完成は、それよりも大幅に遅れることは確実な情勢に。ただ、ネット上からは「もう建て替えを止めたほうが良いのでは…」といった声が目立つ。

1973年完成の中野サンプラザだが、当初より構造体は200年持つことを意図して設計されたという話もあることから、それなのに築40年あまりで建て替える必要が本当にあるのかという見方、さらに従来までの“作っては壊す”といった街づくりは、もはや時代にそぐわないのでは……といった意見も多いようなのだ。

いっぽうで、建て替えに対して否定的な声は、音楽ファンからも特に多くあがっているところ。

東京都内やその周辺においては、ここ数年で収容人数1万人程度かそれ以上の規模を持つコンサート会場こそ続々とオープンしている反面で、2000人規模の比較的手ごろな規模の会場は極端に少ないといった状況。

それだけに収容人員2222人という中野サンプラザのホールは、アーティスト側からすればライブハウス規模からのステップアップという意味合いでも、とても重宝がられ、その閉館が大いに惜しまれたわけだが、建て替え計画がここに来て中断したことを受けて、それならば建て替えではなく修繕にとどめ、ホールの規模も以前と同じ形で再オープンして欲しいという声が多いのだ。

今のところ区側としては、建て替え自体は止めないとし、またホールも7000人規模ものにする計画は変えないスタンスのようだが、現行の計画が一旦ストップしたことを受けて、これらの声がより大きくなっていくのは間違いなさそう。

とはいえ、現状で解体前の建物の管理費や固定資産税として月2800万円を支出している状況にくわえ、また解体が前提で1年半以上なかば放置された現地は、すでに廃墟化が進行しているとの話もあるだけに、悠長に議論をする猶予は無さそうというのも、実際のところのようだ。

Next: 「マジで都心部にそびえる巨大な廃墟です」

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