トランプ政権による関税政策の先行き不透明感が、国際金融市場に動揺を与え続けている。日本市場でも株価の乱高下が続くなか、投資家心理は冷え込み、「押し目買い」の動きも鈍い。しかし、そんな逆風下でも着実に存在感を高める企業がある。節約志向が強まる中、100円ショップや生活雑貨を扱う企業の業績と株価が堅調に推移しており、逆行高を演じる銘柄も散見される。今回は、注目を集める4つの企業をピックアップしたい。(『 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 』田嶋智太郎)
※本記事は有料メルマガ『田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット』2025年4月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:田嶋智太郎(たじま ともたろう)
慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後の一時期は大学教諭として「経営学概論」「生活情報論」を担当。過去30年余り、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、地域金融機関改革、引いては個人の資産形成、資産運用まで幅広い範囲を分析研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等において、累計3,000回超の講師を務めてきた。これまでに数々のテレビ番組へのレギュラー出演を経て、現在はマーケット・経済専門チャンネル『日経CNBC』のレギュラー・コメンテーターを務める。主な著書に『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)などがある。
関税ショックで不況風吹きすさび「プチプラショップ」の人気高まる
なおもトランプ関税の行方が不透明であることに絡んで、国際金融市場の激震が続いている。
足元では、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)が乱高下する状況も容易に収まらず、いまだ積極的に押し目を買い拾っていこうというムードも乏しい。トランプ米政権は、相互関税の上乗せ部分について一部の国・地域に90日間の一時停止を許可すると発表したが、これは提示された「90日間」で日本を含む該当国・地域が意に沿わない数々の要求を米政権側から突き付けられることをも意味する。
おそらく、日本に対しては一つに円安是正のためのしかるべき措置を講じるよう求めてくることとなりそうであり、すでに足元では円高傾向が強まっている。むろん、過度に円高が進むこととなれば、輸出企業を中心とした少なからぬ国内企業にマイナスのインパクトとなる。
もちろん、そうなれば円高メリットを享受できる企業もないわけではない。当然、単に「円高」だけを材料に銘柄選別を行うことには慎重でありたいが、併せて「不況風が吹きすさぶ中、今後一段と強まることが想定される節約志向」に応えるサービスを展開している企業には、あらためて注目が集まりやすくなることが想定される。
そうした銘柄には、全体地合いが著しく悪化している目下の状況下でも買いを集めているものが実際にあり、例えば本日(11日)も「100円ショップ」を展開する銘柄などの株価には「逆行高」を演じているものが散見されている。以下にいくつかの代表例を取り上げておく。
セリア<2782>
言わずと知れた「100円ショップ」業界で2位(時価総額は2,270億円)。ここ数日、株価は年初来高値を更新し続けている。
趣味性の強い雑貨や手芸用品の品ぞろえが充実しており、明るい店舗作りに定評がある。同業他社に先駆けてPOSや自動発注システムを導入し、在庫管理や商品開発にITを活用した効率運営にも特徴がある。結果、利益率も同業で断トツに高い。
25年3月期は49店舗純増。同期は、売上高が前期比5%増の2343.5億円、営業利益は同2.8%増の155.5億円、純利益は同4.8%増の103億円を見込んでいるが、3Q時点の進捗率は営業利益で85%、純利益は86%に達している。

セリア<2782> 週足(SBI証券提供)
すでにスタートした26年3月期は65店純増の計画としており、100円商品の需要拡大で客足が一層伸びる見通し。高単価商品扱う同業他社に対し全商品100円を維持しているところも見逃せない。
キャンドゥ<2698>
国内100円均一店業界3位。全国展開だが、関東が店舗数の4割近くを占める。イオンによるTOBで、2022年1月に同社の連結子会社に。建設費の高騰を受けて小型店舗の出店を控え、ひとまず「イオンモール内など回収の見込めるところに出す方針。なお、すでにスタートした26年2月期は100店舗の新規出店を目指している。
終わった25年2月期の最終損益は1億6,300万円の赤字だったが、これは既存店の価値や将来の退店費用の見直しなどに伴って、特別損失が6億6,000万円に膨らんだ結果。営業利益は3.5倍の8億4,900万円と、従来予想(4億5,000万円)から上振れした。100円を超える価格帯のネイルグッズや玩具などが伸び、採算が改善している。
26年2月期は、売上高が前期比10.1%増の918億円、営業利益は同27.1%増の10.8億円、純利益は1億円の黒字に転換するものと見込まれている。

キャンドウ<2698> 週足(SBI証券提供)
関税の影響について、同社社長は「商品生産を委託する中国の事業者の米国向けの生産が減れば、受注を減らしたくない工場はこちらの生産を安く受けてくれるようになる」と語る。
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