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米国が元凶。世界と日本が大不況と金融危機に陥る5つのシナリオ=高島康司

シナリオ4:ドル・通貨危機

・発生確率低
中(15%〜30%)

・危機の背景
トランプ政権の保護主義的な貿易政策や国際機関からの離脱検討が、ドルの信頼性を損なっている。中国やロシアなどがドル建て資産の保有を減らし、人民元やユーロへのシフトを進めている。また、新興国や資源国がドル建て資産の縮小を加速させる。さらに、米国の財政悪化で政治が不安定化。

・危機のトリガー
サウジアラビアが原油取引を人民元に切り替え、ペトロドルを離脱する。また、中国が米国債を大量売却する。

・波及経路
ドル安が進行し、輸入物価の上昇やインフレが加速し、米国の国際的な経済的影響力の低下が進む。トランプの外交孤立主義が進行すれば、ドルの信用失墜が進む可能性がある。外国投資家が米国市場から撤退して資本流出が発生。そして、株価は暴落する。

・結果
通貨防衛のための急激な利上げをせざるを得なくなる。その結果、景気深刻後退に進む。

他方、脱ドル化は中長期的トレンドだが、短期での「通貨危機」は世界中のドル依存性が高すぎて非現実的だとの意見が強い。ドルの覇権の喪失ではなく、ドルの安定性に対するリスクプレミアム増加の形で出る可能性の方が高い。

シナリオ5:AIバブル崩壊からテック企業発の信用不安へ

・発生確率
中(30%〜50%)

・危機の背景
「NVIDIA」や「OpenAI」など、AI関連企業への過熱した投資が続き、企業価値が過大評価されているとの指摘がある。また、収益性の低いAIスタートアップの増加が、投資家の信頼を損なう可能性も指摘されている。2001年の「ドットコム・バブル」崩壊に類似した状況。

・危機のトリガー
AI企業の収益が期待に届かず、決算ショックで暴落する。それが、テック主導の株式市場全体の崩壊を誘発する。

また、すでに中国の生成AI、「Deep Seek」の発表で「NVIDIA」の株は暴落したことがある。中国のテック企業の追い上げは激しい。生成AIとAI全般、ロボット、先端的半導体などのテック分野で、中国企業の先端性を証明する製品が現れれば、「NVIDIA」ショックが繰り返される恐れがある。それが起こると、確実に株は暴落する。

・波及経路
AI関連株の急落が市場全体に波及し、投資家心理の悪化を招く。そして、テクノロジーセクターへの投資縮小が、経済成長の鈍化要因となる。

「Goldman Sachs」や「Morgan Stanley」はAI企業に2001年の「ドットコム・バブル」の崩壊を彷彿とさせる過熱感があると警告。「NVIDIA」などの主力株が大きく下落した場合、市場全体への連鎖が懸念される。

・結果
21世紀型のITバブルが崩壊する。 すると、テック株に投資をしている年金基金や個人資産が大打撃を受ける。この結果、国内の消費は縮小して不況に入る。また、暴落の規模と範囲が大きければ、金融市場全体の再編成が必要になることもある。

「部分的調整」なら、危機の発生確率は70%以上となる。だが、市場崩壊級の「完全バブル崩壊」は今のところ限定的な見通し。

Next: 複数のシナリオが同時に起こる可能性も?日本に甚大な影響が出る…

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