関税は外国が支払う税金だとトランプ大統領は繰り返し主張しているが、現実は、米国企業と消費者が関税の負担を負担していることを示している。一般的に関税は、米国の輸入業者が支払うものだからだ。この結果、例えば「ゼネラル・モーターズ」は2025年第2四半期に関税で11億ドルのコストを負担したと報告している。
8月1日に、銅の半製品に対する新たな50%の関税が施行された。7月の発表後、銅価格は1日で13%急騰した。これは電気配線から配管まであらゆる分野に影響を及ぼし、最終的にコストは米国消費者に転嫁されることは間違いない。
米国の平均関税率は現在18.3%で、1934年以来の最高水準に達している。これは、トランプ大統領が就任した 1月の2.4%から驚異的な上昇だ。この平均関税率は、一般的な輸入品では、アメリカ人が5分の1近く多くの税金を支払うことになることを意味する。
悪化する雇用統計
そして8月1日、米国で発表された経済データは、雇用創出の大幅な鈍化、経済成長の懸念材料、トランプ大統領の絶え間ない関税率の変更による経済の不確実性による企業投資の停滞の兆しを示した。
7月の非農業部門雇用者数は7万3000人増加し、アナリストの予想(10万人)を大幅に下回った。失業率も4.2%に上昇した。また、5月と6月の雇用者数は、前回発表の数値から合計25万8,000人分下方修正された。
この修正により、6月の雇用者数は1万4,000人、5月は1万9,000人となり、実質的に横ばいとなった。アナリストたちは、7月の数値も下方修正され、マイナスに転じる可能性があると指摘している。一方、民間企業でビジネス・エグゼクティブコーチング企業である「Challenger,Gray&Christmas」によると、7月の雇用削減数は、パンデミック以降、同月の平均を大幅に上回っているという。2021年から2024年までの7月の雇用削減発表の平均は2万3v584件だった。過去10年間(2015年から2025年)の平均6万398件と比べても、先月の発表数は依然として平均を上回って
いる。
今年に入ってからの累計では、企業は80万6,383件の雇用削減を発表しており、これはコロナで経済が止まった2020年の184万7,696件以来の最高値となっている。これは、昨年同期間の46万530件に比べて75%増加し、2024年通年の76万1,358件に比べて6%増加している。
そして、雇用統計が米経済の弱さを浮き彫りにした数時間後、トランプ大統領は「労働統計局」の局長エリカ・マクエンタファーを解任する計画だと表明し、ソーシャルメディアで彼女が政治的な理由で月次データを操作したと示唆した。大統領がこのようなことをした前例はない。
「トランプ不況」に突入か?
このように、アメリカの雇用統計は予想以上に悪化していた。
この背景になっているのは、各国への高関税の適用による米企業のコスト負担の増加、そしてインフレ懸念である。結局関税は、米国内の輸入企業が負担しているのだ。
このコストの増加は製品価格に転嫁され、消費者物価を引き上げることになる。アメリカを製造業大国にして景気を一気に引き上げるというトランプの計画は、少なくともいまの時点ではまったく逆の結果になっている。
しかし、それぞれの産業分野の悪化する雇用状況を見ると、高関税によるコスト増やインフレ懸念だけではないことが明らかになる。







