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高関税で自爆…米国「トランプ不況」突入を示す数多のシグナルとは?日本から5500億ドル調達も浮上困難=高島康司

トランプ大統領が推し進める高関税政策は、米国製造業の復活と景気回復を狙ったものだった。しかし、就任当初2.4%だった平均関税率は18.3%へと急上昇し、企業コストの増加やインフレ懸念を招いている。雇用統計の悪化、住宅市場の低迷、農業部門への打撃など、米経済は「トランプ不況」と呼べる局面に入りつつある。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)

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※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2025年8月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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高関税による「トランプ不況」は回避できない

各国への高関税の適用によって、反対にアメリカが「トランプ不況」とでも呼べる状態に突入しつつある。

トランプ米大統領は、4月から一時停止していた相互関税率を更新する大統領令を発令した。現在、米国のほぼすべての貿易相手国は10%から50%の関税に直面している。

今年初め、一連の基本関税および産業分野別関税が発効した後、多くのエコノミストは経済混乱を予測していた。これまでのところ、インフレの影響は多くの予測よりも軽微にとどまっている。しかし、経済的な痛手が米国の消費者に波及するにつれて、この状況はまもなく一変する可能性があるという懸念も生じている。

米国と安全保障関係にある日本と韓国は、米国との貿易黒字が大きいことから、15%の関税が課せられた。欧州連合でさえ、かつては考えられなかった15%の米国関税率を受け入れる合意を結んだ。トランプのロシア・ウクライナ戦争戦略の混乱は、欧州の指導者を不安にさせている。EUは、米国の戦略的撤退のリスクを冒すよりも、単に関税問題で折れたようだ。

そして、やはり米国との貿易黒字の大きいその他のアジア諸国は、平均で22.1%の関税に直面している。タイ、マレーシア、インドネシア、パキスタン、フィリピンなど、トランプ大統領と交渉を行った国々は、譲歩したアジア諸国に対する割引率である19%の関税が課せられた。インドは25%の関税に加え、ロシアとの貿易に対する追加の罰則も科せられる可能性がある。

また、一部の合意は依然として未決だ。特に、日本や韓国よりも高い20%の相互関税を課せられた台湾は、依然として交渉中であると主張している。

報復による混乱は起こっていない

一方、現在の貿易戦争では、報復関税を課すとの脅しはあるものの、中国とカナダを除いて、実際に米国製品に報復関税を課した国はない。

報復関税を課すと、自国の消費者物価が上昇し、経済活動が低迷し、トランプ大統領の姿勢を硬化させ、収益性の高い米国市場へのアクセスが制限されるおそれがあるからだ。その代わりに、トランプ政権と合意を交渉した国々は、米国市場へのアクセスをある程度維持するために、実質的に高い相互関税率を受け入れている状態だ。

このような状況なので、中国やカナダを除くと、トランプの高関税に報復する貿易戦争は起こっていない。第一次対戦前や1930年代の大恐慌の後など、過去の歴史的なケースを見ると、高関税の適用は貿易相手国からの同様の報復関税を招き、結果的には世界経済は混乱し、世界不況を深化させた。トランプのアメリカに報復する国は少ないので、まだ世界経済は混乱を回避できているという状況だ。

一般的に関税は、米国の輸入業者が支払うことになっている。しかし一部の企業が、トランプ大統領が腰が引けて関税が撤廃または引き下げられるまで乗り切ることを期待して、顧客である米国の輸入業者にコストを全額転嫁せず関税を吸収することを選択したことも混乱の拡大の抑止に一役買っている。

米経済への深刻な影響

しかし、高関税適用の混乱は完全に回避できたのかと言えばまったくそうではない。これから米経済は、高関税によるマイナスの影響で「トランプ不況」とでも呼べる状態に突入する可能性が非常に高くなっているのだ。その引き金となるのは、アメリカの国内物価の上昇、つまりインフレの再燃である。

Next: 「トランプ不況」に突入か?高関税のコストを負担するのは結局…

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