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高関税で自爆…米国「トランプ不況」突入を示す数多のシグナルとは?日本から5500億ドル調達も浮上困難=高島康司

分野別の状況をまとめてみた。

<テクノロジー>

テクノロジーは民間部門で最も多くの雇用削減を発表しており、2025年には8万9,251件で、2024年7月までの6万5,863件から36%増加した。この業界は、人工知能の進展と就労ビザに関する継続的な不確実性により、再編が進んでおり、これが労働力削減に寄与している。

<小売>

小売業界は7月までに8万487人の雇用削減を発表し、前年同期の2万3,077人から249%増加した。小売企業は関税、インフレ、経済不透明感の継続により、人員削減や店舗閉鎖に直面している。消費者支出のさらなる減少が追加の損失を引き起こす可能性がある。

<非営利>

非営利団体は、連邦政府の資金削減、運営コストの増加、経済の不確実性の継続により、ますます厳しい課題に直面している。これらの団体は2025年7月までに1万7,826人の人員削減を発表し、前年同期の3,477人から413%増加した。この急増の多くは、直接サービス提供者と関連支援構造の両方に影響を与える連邦予算の削減に関連している。

<自動車>

7月、自動車メーカーは4,975人の人員削減を発表し、その主な理由として関税を挙げた。これは、2024年11月に1万1,506人の人員削減が発表された以来、単月での最も多くの人員削減活動だ。自動車業界は2025年7月までに1万6,883人の人員削減を実施し、前年同期の2万4,434人と比較して31%減少した。この業界は、生産需要の変動、サプライチェーンの混乱、および運用コストの増加の影響を受けやすい状況が続いている。

さて、かなり細かくなってしまったが、これで「トランプ不況」に入る可能性が高いことがはっきりした。実は、「トランプ不況」の引き金は高関税の適用によるコスト上昇とインフレ懸念だけではないのだ。AIの導入によるリストラの急増、「DODGE」による連邦政府職員の大規模削減などもその理由だ。そこには、「トランプ不況」に至る明確なパターンがある。それを簡単に図式化すると次のようになる。

・高関税によるコスト上昇に伴うリストラの急増
・インフレの上昇懸念による買い控え
・AIの導入によるリストラの急増
・「DODGE」による連邦政府職員の大規模削減
         ↓
      個人消費の落ち込み
         ↓
      「トランプ不況」

農業部門の落ち込み

このパターンは、アメリカの非農業部門だけの雇用統計から見たものだ。

しかしいま、まだ統計値は明らかになっていないが、農業部門の落ち込みも相当に大きなものになるようだ。それというのもトランプ政権は、不法移民の徹底した排除を実施しているからだ。不法移民の摘発は「米移民・関税執行局(ICE)」が契約した民間軍事会社によって行われている。彼らは、「ICE」から与えられた摘発のノルマを達成するために、不法、合法を問わずラテンアメリカ系のプロファイルに合致していれば、拘束されてしまう。

これは、移民労働力に依存するカリフォルニアなどの米西海岸の農業を直撃している。労働力不足から農産物の収穫ができず、市場に出荷できない状況なのだ。SNSでは、農業生産者の悲痛な悲鳴が投稿されている。農業部門の統計が出てくると、米経済の状況の深刻さが分かるはずだ。

不況入りを示す住宅市場の低迷

そして、「トランプ不況」をはっきりと示しているのがアメリカの住宅市場だ。8月1日に発表されたデータによると、住宅固定投資は第1四半期に1.3%減少した後、第2四半期には4.6%減少した。住宅投資が大幅に減少している主な理由の一つは、住宅販売が大幅に減少していることだ。

アメリカの春の住宅購入シーズンは、10年余りで最も弱い局面を迎え、2012年以来の最も鈍い市場となり、本格的な価格暴落が次に起こる可能性を懸念させている。春は伝統的に住宅販売契約のピーク時期だったが、現在苦境に立つ米国住宅市場ではその傾向は逆転している。データ分析大手の「レッドフィン」によると、2025年4月から6月は13年間で最も低い販売件数を記録している。これを「トランプ不況」に入ったことを告げる確実なサインであるとする見方も強くなっている。

Next: 日本も影響大。トランプ政権のウルトラC「逆転のシナリオ」とは?

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