スーパーのコメの平均価格は、政府備蓄米の引き下げ効果がほぼ消滅する中で再び最高値を伺うようになりましたが、今後7年産の新米が登場するとさらにこれが高まりそうです。このコメ価格上昇で困るのは、実は国民だけではなさそうです。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)
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プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
今年の新米も驚くほど高価…
政府備蓄米の価格抑制効果が消えつつある中で、期待された7年産の新米供給でしたが、すでに出始めている早場米をみると、これが懸念された通り昨年以上に高い価格で登場しています。
新潟産「コシヒカリ」は5キロ6,000円台、北海道の「ゆめぴりか」は5キロ5,980円などと、昨年秋よりもさらに3割あまり高くなっています。
スーパーのコメの平均価格は、政府備蓄米の引き下げ効果がほぼ消滅する中で再び最高値を伺うようになりましたが、今後7年産の新米が登場するとさらにこれが高まりそうです。
このコメ価格上昇で困るのは国民だけではなさそうです。
コメで男を挙げた小泉農相
まず、安いコメの提供で男を上げ、自民党総裁選でここまでフロントランナーと見られている小泉農相です。彼は別名「米大臣」と呼ばれています。彼の成果は、農協支配のもとにあったコメの供給体制に風穴を開けたことがあり、その結果、年間30万トン近い政府備蓄米を市場放出し、国民に安いコメを手にするチャンスを与えました。
もっとも、地域によって備蓄米が回ってこないところもあり、TVで宣伝されるほど、安い備蓄米の恩恵にあずかった消費者は多くないようですが、それでもスーパーでのコメの平均価格を一時3,000円台前半まで下げたことは国民にも受け入れられました。先代の小泉純一郎元首相は、まだ進次郎氏の総理立候補は早いと見ていましたが、周りに押されて立候補し、ここまで優勢に戦いを進めています。
しかし、備蓄米ももうなくなり、その価格押し下げ効果もほぼ消滅しました。7年産のコメの増産に政府は舵を切りましたが、猛暑の影響もあって、計算通り供給が増えるか不透明です。特に精米後の白米の供給が増えるかどうか。
この7年産の新米が早いところですでに出始めましたが、冒頭に示したように、昨年秋よりもかなり高い価格で登場しています。農協による「概算金」が60キロ当たり3万円前後と高い値段で買い集めたため、当然、卸価格も高くなります。これは当初から予想されたことです。
10月4日の総裁選で小泉候補が勝ったとしても、10月には新米がより多く出てきます。これらが5キロ6,000円以上となれば、この夏場に供給した5キロ2,000円の備蓄米の3倍の高価になります。供給量が計算上より少なくなると、備蓄米のバッファーがないだけに、コメ価格は昨年以上に上昇するリスクがあります。
「小泉総理」にはかなり痛手となり、政権を揺るがす可能性があります。






