<1. 商業不動産(CRE)問題の核心>
パンデミック以降、リモートワークが普及し、大都市のオフィスビルの空室率が歴史的な水準まで上昇している。そして、これまでの急激な利上げにより、不動産ローンの借り換えコストが急騰した。アメリカでは伝統的に、大都市圏のオフィスビルや商業施設への融資の多くを、大手銀行ではなく地方銀行が担ってきた。地方銀行の資産ポートフォリオは、商業不動産向け融資の比率が非常に高いのが特徴である。
商業不動産の価値が暴落し、借り手の不動産オーナーがローンを返済できなくなると、地方銀行は巨額の損失を抱えることになる。
<2. 政府閉鎖と商業不動産破綻の同時発生>
この2つが同時に起こると、地方銀行は以下の「二正面作戦」を強いられる。
政府閉鎖による信用の悪化:顧客である連邦職員や地元企業からのローン返済が滞り始め、信用リスクが増大する。
商業不動産破綻による資産価値の暴落:銀行が保有する最大の資産である「商業不動産向け融資」が不良債権化し、銀行のバランスシートが急速に悪化する。
もしこの二重苦が現実となれば、以下のような連鎖反応が起きる可能性が懸念される。
<ステップ1: 地方銀行の経営不安>
商業不動産ローンの巨額損失と、政府閉鎖による貸倒引当金の積み増しが同時に発生。いくつかの地方銀行の自己資本が危険な水準まで低下する。
<ステップ2: 預金の流出(取り付け騒ぎ)>
「あの銀行は商業不動産融資と公務員ローンで危ないらしい」という不安が広まると、預金者は一斉にお金を引き出し、より安全な大手銀行(JPモルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカなど)へ資金を移動させ始める。これは、2023年春にシリコンバレー銀行(SVB)などが破綻した際に見られた現象と同じである。
<ステップ3: 地方銀行の破綻と「信用収縮」>
預金流出と資産の不良債権化に耐えきれず、いくつかの地方銀行が破綻に追い込まれる可能性がある。生き残った銀行も、損失を恐れて一斉に融資を厳格化(貸し渋り・貸し剥がし)する。これが「信用収縮」と呼ばれる現象である。
<ステップ4: 実体経済への深刻なダメージ>
地方銀行は、アメリカの全企業向け融資のかなりの部分、特に中小企業向け融資を担っている。その地方銀行が融資を止めると、中小企業は運転資金や設備投資の資金を調達できなくなり、倒産や解雇が急増する。これにより、金融危機が実体経済の深刻な景気後退へと発展する。
このように、政府閉鎖は地方銀行の借り手の健全性を脅かし、商業不動産問題は地方銀行の資産(貸し出し)そのものの価値を破壊する。この二つが重なることは、米国の金融システムの「アキレス腱」である地方銀行網を直撃し、2023年のSVB破綻時をはるかに超える規模の金融不安を引き起こす、極めて危険な組み合わせと言える。
その結果、これはアメリカの金融危機を引き起こす「引き金」になる可能性を十分に秘めている。これは2023年春に起きたシリコンバレー銀行(SVB)破綻の連鎖を、はるかに上回る規模で再現する可能性がある。
2008年(リーマン・ショック)との違い
2008年の金融危機は、比較的リスクが低いと見なされていた「住宅ローン」が、複雑な金融商品(デリバティブ)に組み込まれて世界中に拡散したことで発生した。一方今回のシナリオは、それとは異なる。商業不動産は複雑な商品にはなっておらず、「米国の地方銀行」という特定のセクターに非常に高く集中している。そのため、危機が発生した場合、そのセクターを集中的に破壊し、結果として米国経済の毛細血管である「中小企業への融資」を停止させるという形で、金融危機が実体経済を直撃することになる。
このとき暗号通貨の相場はどうなるか?
現在、米大都市圏の商業不動産は危機的な状況にあるもののなんとか持ちこたえている。一方、連邦政府閉鎖が引き起こす銀行の経営リスクはすでに現実のものになっている。この2つに危機が同時に重なるかどうかはまだ分からない。しかし、その可能性を指摘する専門家が増えているのも事実だ。連邦政府の閉鎖が長引くにつれ、このような突発的な危機が発生する可能性は日増しに高くなっていることは間違いない。
では、こうした金融危機が発生した場合、暗号通貨の相場はどうなるだろうか?
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