テレビ東京の経済報道番組『モーニングサテライト』の放送時間が拡大したが、内容は薄くなったように思う。出演する「専門家」のコメントの多くは拝聴に値しないものだ。(『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』近藤駿介)
プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ)
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝える無料メルマガに加え、有料版『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』を好評配信中。
テレビ東京『モーニングサテライト』が放送時間拡大で失ったもの
放送時間が長くなるにつれ薄くなってきた中身
1998年10月から18年半に渡ってテレビ東京で放送されている『モーニングサテライト』。ネットが今のように発達していなかった番組スタート当時は、貴重な情報番組だった。小生も長い間、この番組を目覚まし代わりにしていた。しかし、ネットの発達に伴って、海外市場状況を報じることの付加価値自体は落ちてきている。
こうした現実に対応するためか、当初45分だった放送時間は2000年代に入ってから長くなり、この4月からは80分になった。長くなった放送時間を埋めるのが「専門家」と呼ばれる人達の解説やトーク。しかし、番組に「専門家」として登場する人のほとんどが、株またはFXのセールスマンというのが実態。拝聴するに値するコメントができる人は1人か2人というのが現実。放送時間が長くなるにつれ、番組の中身は薄くなってきている。
聞くに耐えない「専門家」の解説
先日も「株(価)のスペシャリスト」6人による、『大変革時代を生き抜く投資戦略』と題する特集が組まれていたが、中身は残念なもので聞くに堪えないものだった。結局、見ていられずに途中で電源OFF。
例えば、「相場のヒントは米国株にあり」という自作の格言に基づいた、「米国株が上がると日本株も上がりやすい」という解説。米国株に限らず経済指標などと並べたこのような解説は「専門家」たちの十八番。一見もっともらしく見えるが、全く意味がない。
仮に、米国株式市場動向を予想することが日本の株式市場動向を予想することよりも格段にやさしいのであれば、こうした指摘は論理的な指摘だといえる。しかし、実際にはそうしたことはない。現象としては米国株が上昇すれば日本株が上昇する確率は高いが、米国株式の動向を予想できないのであれば全く意味のない指摘。
しかも、「米国株が上昇しても日本株が下落することがある。ただし、その反対はない」との解説まで付けられると、何をかいわんやの世界。そもそも格言と言えない代物。
放送後にビデオで確認したところ、その他にも突っ込みどころ満載の呆れる議論のオンパレード。「鵜呑みは楽だがヤケドする」という自作格言を披露していた「専門家」がいたが、まさに鵜呑みにしてはいけない情報の山だった。
原点に戻って広範囲の情報をコンパクトに報じてほしい
もともと『モーニングサテライト』は、朝の忙しい時間帯に為替から金利、株価、商品市況、経済統計、要人発言まで広範囲の情報をコンパクトに報じてくれていたところに付加価値があった。
この価値はネットが発達した今でもほとんど色褪せていないはず。時間を掛ければネットで情報を得ることは可能だが、寝ている間に何が起きたのかという情報を短期間で得られるということは貴重な価値。
放送時間を長くして質を落としている『モーニングサテライト』には、ぜひ原点に立ち返ってもらいたいものだ。
『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』(2017年4月5日)より
※記事タイトル、本文見出し、太字はMONEY VOICE編集部による
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