インデックス投資を実践するにしても、バフェット流の長期投資を実践するにしても、基本的には「米国株」に投資することになります。このことに対して、不安を感じている人も多いと思います。
その1つの要因が「為替リスク」の存在です。外国株への投資では、将来的に通貨「円」が安くなったり高くなったりすることで、投資のリターンが増加または減少するのではないかという心配がつきまといます。
それでは、一体、株式市場において、どのぐらいの為替リスクが存在しているのでしょうか?
本稿ではできるだけ実例を挙げながら、直近10年間のデータを使って、為替レートの変動によるリスクを可能な限り、定量的に捉えていきたいと思います。外国株への投資に不安を感じている人は必見の記事です。
また、日経平均株価とドル円レートの相関係数を算出して、為替と株価の変動を明らかにしています。本稿での検証によって、「為替リスクの正体」が判明するはずです。(『ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』東条雅彦)
外国株投資の為替リスクは幻だった。直近10年のデータで徹底検証
よくある勘違い
為替リスクは実は幻です。株式投資の書籍にはよく外国株を保有していると、為替リスクが生じるので注意が必要だと書かれています。
多くのファイナンシャルプランナーは、為替リスクを考慮して外国株の比率を低めに設定したポートフォリオを推奨しています。メルマガ読者さんからも、次のようなご意見をよく頂きます。
- 日本株よりもリターンの高い米国株を保有したいけど、為替リスクがあるため、少ししか買っていません。
- 日本株と米国株の比率をそれぞれ50%ずつして、為替リスクをコントロールしています。
日本人が外国株を保有した場合、為替が円安に傾くと名目上の保有額が増えます。反対に為替が円高に傾くと名目上の保有額が減ります。そのため、外国株を保有する投資家は「為替リスク」があるため、日本株と外国株を同じような目線で評価しようとしません。外国株から得られるリターンが、円安によって帳消しにされたら大変です。
そこで、この為替の影響を完全に排除する場合、一般的には次の取引をすれば、純粋に外国株からのリターンのみを受け取れるとされます。
<米国株に投資する場合の例>
- 米国株を100万円分、購入する。
- ドル円を100万円分、空売りする。
資金が2倍も必要な手法となりますが、このようにすれば、純粋に米国株の変動のみを得られます(※正確には、そう誤認しがちです)。
さて、本当にこういう取引が必要なのでしょうか? 実際の事例で検証してみましょう。
トヨタ株は日本市場と米国市場の両方で売られている
トヨタ自動車株を使って、為替リスクの影響度を測定していきます。
トヨタ自動車は東京証券取引所とニューヨーク証券取引所の両方に上場しています。東京証券取引所では取引コード「7203」、ニューヨーク証券取引所ではティッカーシンボル「TM」で取引されています。つまり、トヨタ自動車株には「日本株」と「米国株」が存在しているのです。
<トヨタ日本株>銘柄コード:7203
<トヨタ米国株>ティッカーシンボル:TM
多くの日本人は、東京証券取引所でトヨタ日本株を購入していると思います。一方、多くのアメリカ人は、ニューヨーク証券取引所でトヨタ米国株を購入しているはずです。
それでは、ここで次の2つの問題を出します。
(問題1)
東京証券取引所でトヨタ日本株を買うのと、ニューヨーク証券取引所でトヨタ米国株を買うのとでは、どちらがリターンが大きいのでしょうか?
(問題2)
日本に住んでいる私たちがニューヨーク証券取引所に上場しているトヨタ米国株を購入した場合、為替リスクが生じるのでしょうか?
この2つの問題に即答できる人はそう多くはないと思います。その答えを知るために実際に検証してみました。