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トヨタ株は日本と米国のどちらで買うべきか問題~為替リスクは幻だった!=東条雅彦

株式市場では強烈に「購買力平価説」が機能する

通貨安になれば株価は上昇して、通貨高になれば株価は下落します。為替の変動が株価に織り込まれる理由は、株式市場では強烈に「購買力平価説」が機能していると考えられるためです。

購買力平価説とは、長期にわたる為替レートの決定理論で、スウェーデンの経済学者カッセル氏によって提唱された理論です。この購買力平価説には次の2種類があります。

<絶対的購買力平価説>

為替レートは2国間の通貨の購買力によって決定されるという説です。具体的には、例えばアメリカでは1ドルで買えるハンバーガーが日本では100円で買えるとする時、1ドルと100円では同じものが買える(つまり1ドルと100円の購買力は等しい)ので、為替レートは1ドル=100円が妥当だという考え方です(※いわゆる「ビックマック指数」が絶対的購買力平価説の1つです)。

しかし、この説が成立するにはすべての財やサービスが自由に貿易されなければなりませんから、厳密には成り立たないことになります。

<相対的購買力平価説>

為替レートは2国間の物価上昇率の比で決定されるという説です。具体的には、ある国の物価上昇率が他の国より相対的に高い場合、その国の通貨価値は減価するため、為替レートは下落するという考え方です。しかしながら、この説もすべての財やサービスが同じ割合で変動することを前提としているため、厳密には成り立たないことになります。

出典:初めてでもわかりやすい用語辞典 – SMBC日興証券

「絶対的購買力平価」と「相対的購買力平価」の2つに共通しているのは、「購買力」を中心に値段が決定されるという点です。もう少しわかりやすく言うと、通貨価値が商品価値を決定している(通貨価値→商品価値)のではなく、商品価値が通貨価値を決定している(商品価値→通貨価値)のです。

購買力平価にも欠点はあるものの、概ね機能しているだろうと考えられています。ただ、絶対的購買力平価説も相対的購買力平価説も「すべての財やサービスが自由に貿易されるわけではない」または「同じ割合で変動するわけではない」という理由から、完璧には機能しません。

しかし、これは「物理空間」での話です。物理空間では自由に商品を移動できないし、運送するコストもかかります。A国の商品をB国に転売して利益を得るという商売が成立する理由は、物理空間には「利サヤ」が常に存在しうるためだとも言えます。

また、物理空間だけではなく情報空間にも常に利ザヤが存在しています。物理空間との違いは「情報空間では運送コストがゼロで手数料も少なく、ワンクリックで利ザヤを抜けてしまう」という点です。そのため、情報空間では購買力平価説が成立しやすい環境にあります。

そして、株式市場や為替市場は「情報空間」に存在しています。為替の変動で生じる利ザヤが株式の場合、±1~2%という極めて狭い範囲に留まっている理由がこれです。

Next: 日経平均株価と為替レートの関係

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