さらに意味不明な10.9兆円の支出
さらには、アベノミクスの失敗として指摘された格差の問題、弱者切り捨て、保育、介護など、反対勢力から指摘されたものに「絆創膏」を張るように少しずつ手当てし、これをもって「1億総活躍」と言い、英国のEU離脱リスクへの対応と称して、訳のわからない10.9兆円を計上しています。
一方で対応の遅れた震災復興には3兆円のせています。
ここには、お金さえつければ、皆喜び、市場も評価するとの甘い判断が見て取れます。震災復興が進まない理由は、お金の制約ではありません。現に東北ではいまだに使えずに金庫(銀行口座)に置かれたままのお金が沢山あります。
問題はカネではなく、建設工事を進める際のリーダーシップ、まとめ役、人や土地、資材の手配など、政治そのものです。
保育園を作るにも、土地手当から周辺住民の説得、保育士の確保など、ミクロの仕事が多数あり、お金を何千億円つけたからよい、ということにはなりません。
派遣法を改悪(企業からは改善)させながら、最低賃金の引き上げをするくらいなら、派遣業者でなく、労働者の処遇改善につながる「改革」をしたほうが、お金もかかりません。必要なのは財界への説得力です。
表向きは財政再建との両立と言いながら、実は民主党時代を超える財政のばら撒きで政府債務の膨張が進み、その秩序ある修正、再建計画は全く見えません。
結局、日銀を使って財政ファイナンスを行い、ヘリマネで悪性インフレを起こし、インフレ増税による強制的な国民負担の財政再建に持ち込もうとしています。
こういう政府を選んだ国民にも責任がありますが、そのたくらみを知らずに「民主党より実行力がある」と思い込ませた責任はメディアにもあります。健全な政府批判をする人がいなくなると、日本にも「ヒトラー」が登場します。
批判を受け入れない政府はもとより、意地悪を避けて批判をしない多くのメディアにも大きな責任があります。
『マンさんの経済あらかると』(2016年8月3日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による
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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。