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不意打ちでも安心!? 「預金封鎖」に対抗して資産を守り抜く方法=東条雅彦

キプロス国民の怒り爆発!ブルドーザーで銀行に突撃する強者も

キプロス国民は預金封鎖が発表された後、早朝からATMに並ぶも、もう預金の引き出しはできなくなっていました。これが、その際に表示された画面です。

ATMには「技術的な問題により、現在お取引できません」というエラーメッセージが表示されています。

これを知った国民は議会前でデモを行ったりして、大変な騒ぎになりました。怒りを我慢できず、ブルドーザーで銀行に突撃する強者も出てきました。

当初、キプロス政府は短期決戦で預金封鎖を解除する予定でしたが、法案がなかなかまとまらず、そのため国民は2週間も耐えなければいけませんでした。

最終的にキプロス国民の銀行預金はどうなったのか?

キプロスには大きな銀行が2つありました。国内第1位のキプロス銀行と、国内第2のライキ銀行(キプロス・ポピュラー銀行)です。

政府は経営が悪化していたライキ銀行を潰すことにしました。ライキ銀行の健全な資産を、キプロス銀行に移管することにしたのです。そして、ライキ銀行には大量の不良債権を残して倒産させました。

<最終的に決まった預金税の内容>

1)キプロス銀行の預金者
・10万ユーロ以下は全額保護する
・10万ユーロを超える分の47.5%をキプロス銀行の株券へ転換する。株式転換分以外のユーロ資産は没収とする(預金税を課税する)

2)ライキ銀行の預金者
・10万ユーロ以下は全額保護する→キプロス銀行へ移管した
・10万ユーロより多い預金は全額、没収する(100%の預金税を課税する)

この預金税は個人・法人問わず実施されました。

結局、キプロス銀行、ライキ銀行のどちらに預けていても、10万ユーロより多い通貨「ユーロ」は没収されました。

当初案は、10万ユーロ以下の預金者には6.75%、10万ユーロ超の預金者には9.9%の預金税を課すというもので、国民全体が広く浅くダメージを受ける内容でした。しかし、このような少額預金者も含めて課税する行為は、政治的には不可能でした。

そのため、広く浅くダメージを広げるのではなく、銀行を1つ閉鎖させて、富裕層に大きな負担を強いる方針に転換したのです。

そのため、キプロスの銀行に多くの資金を預けていたロシアの富裕層たちが、大ダメージを受けることになりました。

キプロス政府は預金税で合計42億ユーロを得て、EUとIMFから100億ユーロの支援を受けました。

この後、国内第2の銀行を失ったキプロスの経済はガタガタになっています。2007年より以前の失業率は概ね3%台(完全雇用)で推移していましたが、キプロス・ショック以降は失業率が一気に跳ね上がりました。

<キプロス 失業率の推移>

2007年 3.91%
2008年 3.67% ←リーマン・ショック
2009年 5.41%
2010年 6.27%
2011年 7.91%
2012年 11.88%
2013年 15.89% ←キプロス・ショック(預金封鎖&資産課税)
2014年 16.13%
2015年 15.32%
2016年 14.23%

<キプロス 名目GDPの推移(単位:10億ユーロ)>

2012年 19.47
2013年 18.07 ←キプロス・ショック(預金封鎖&資産課税)
2014年 17.39
2015年 17.42
2016年 17.82

キプロス経済は今もまだ完全には立ち直れていません。しかし、失業率は毎年1%ずつ改善されてきており、名目GDPも今年は前年比で2%上昇する見込みです。厳しい状況が続いているものの、最悪期からは脱出しつつあります。

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