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日中戦争どころか急接近中!? 安倍・習近平「蜜月時代」の幕開け=高野孟

「日中漁業協定」ですべて説明がつく尖閣周辺海域「領海侵入」

ここまで読んでこられた読者は、そんなことを言ったって、8月上旬には中国海警艇が数百隻の漁船を引き連れて尖閣周辺海域に押し寄せてきたではないか。右寄りメディアは「中国が南シナ海と同様、東シナ海でも強硬手段に打って出てきた」と書き立て、ネットでは「あれはただの漁船ではない。武装した海上民兵が乗船している」とか「次は尖閣上陸だ」とか、大騒ぎが起きているではないか――日中関係の基調は友好ではなく戦争に向かっているのではないか――と疑問に思うかもしれない。

実際、右寄りでもなく感情的な反中国派でもないだろうと思われる論者の中にも「ついこの間、あのような軍事的挑発を行っておきながら、一転して柔軟路線に出てきたのは何か裏があるぞ」とか、「G20を成功させるために安倍を懐柔しようとして猫を被っているだけだ」とか、言いふらす人がいる。

まず第1に、97年に橋本内閣の下で調印され2000年に発効した「日中漁業協定をちゃんと読まなければいけない。日中の領有権と排他的経済水域の主張がぶつかり合う尖閣諸島北方に関しては「暫定措置水域」を設定して、そこでは「いずれの国も相手国の許可を得ることなく操業することができ各国は自国の漁船についてのみ取締権限を有する」と定めている。排他的経済水域が確定していれば、他国の漁船がそこに入って操業するには相手国の許可を得なければならないと、国連海洋法で定められているが、その適用除外とするために暫定措置が取られた。

第2に、中国公船が「数百隻の漁船を引き連れて来襲した」とか、その漁船に「海上民兵が乗っていた」とかいうのは単なるデマで、その証拠は提出されていない。駐日中国大使の表現によれば「(8月1日に)禁漁期が終わって中国漁船が一斉に暫定措置水域に押し寄せたので、中国海警などが(日本の主張する)領海との間に入ってその管理に当たった」のである。

また、朱建栄教授によれば、その水域内で中国漁船がギリシャ船と衝突して沈没し日本の海保艇が救助したが、その際に中国海警の現場責任者から海保に対して、「この度、多くの中国公船が出動したのは事実だが、それは金儲けしか考えない数百隻の中国漁船の中には、暫定措置水域を超えて尖閣の(日本側が主張する)領海内に乱入する者が出かねないので、それを防ぐための出動である。当方は14年の日中4項目合意を遵守している。大半の漁船に指導が行き渡ったので公船はほとんど引き上げたためギリシャ船との衝突が起きた時には現場に公船はいなかった」と説明し、中国船員を海保が救助してくれたことに繰り返し礼を述べたという。

第3に、現実にこの時期に中国漁船及び中国公船が尖閣周辺の領海に侵入した隻数を見ると、

中国漁船 中国公船
(退去警告延べ隻数) (領海侵入延べ隻数)
8月5日 7 3
6日 1 0
7日 15 11
8日 24 4
9日 25 10
10~16日 0 0
17日 0 4
18~20日 0 0
21日 0 4
22日~ 0 0

200~300隻と言われた中国漁船の内、暫定措置水域を超えて尖閣領海に侵入したのは5日から9日までの5日間に延べ72隻であり、それを押し戻すために侵入した公船は延べ28隻である。中国側が言うように、9日までに漁船に対する指導が行き渡った」ので公船は引き揚げて、11日にその辺りでまだウロウロしていた漁船がギリシャ船と衝突した際には近くに公船はいなかった。

その後、17日と21日に公船の領海侵犯があるが、これは中国側が14年1月以降、毎月3回程度、定期的に領海侵犯デモンストレーションを行っているルーティーン活動(注4)で、むしろ事態が沈静化して常態に復したことを示す。
(※注4)この「ルーティーン」については、INSIDER No.804、前掲『沖縄自立と東アジア共同体』を参照。

つまり、8月初旬の「中国尖閣来襲」と下旬の「中国対日軟化は断絶しているのではなく、連続しているのである。

Next: 「大人の階段を上る」中国外交を日本がコントロールする方法

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