テレビの衰退は時間の問題。不可欠となる第二の柱
テレビ業界は、かつて我が世の春を謳歌していました。高度経済成長期からバブル崩壊にかけては、テレビが流す画一的な情報が人々の共通の話題となり、世論にも非常に大きな影響力を持っていました。そこから多くのスターが生まれてきたことも事実です。
しかし、インターネットの登場により、次第に流れが変わっていきます。テレビに頼らなくても、必要な情報はいつでもインターネットから検索できるほか、様々なコンテンツがインターネット上に溢れるようになりました。人々はテレビを見ないでも時間を潰せるようになったのです。
スマートフォンの普及やそれに伴う動画コンテンツの充実は、テレビにとってもはや直接的な脅威です。すでに、テレビは全く見ずに、YouTubeばかりを見る若者も増えています。その結果、「ユーチューバー」なるものも登場し、テレビスターのように多くのファンを獲得しているのです。
動画コンテンツの普及によるテレビの将来的な衰退は明らかです。どれだけの世帯がテレビをつけているかを表す「総世帯視聴率(HUT)」は、かつてゴールデンタイムで70%と言われていましたが、いまや60%にまで低下しています。これは疑いようのないトレンドです。
各テレビ局も手をこまねいているわけではありません。テレビ事業に加えて、新たな収益の柱を模索しています。
例えば、日本テレビはインターネット動画サイトの「Hulu」を買収し、動画コンテンツの育成に力を注いています。テレビ朝日は「AbemaTV」に出資、テレビ東京も自社コンテンツの配信を積極化しています。
コンテンツ関連だけではありません。TBSはテレビ局の本拠地である赤坂を中心に不動産開発を進めています。そのほか、テレビと親和性の高い通販事業を積極化する動きも見られます。
そんな中、最も関連事業比率が高いのがフジテレビを傘下に持つフジ・メディア・ホールディングス<4676>です。サンケイビルを傘下に抱え、都市部の不動産開発に余念がありません。不動産事業の業績はみるみる拡大してきました。
利益面においては、放送・コンテンツ事業の利益よりも不動産事業の方が大きくなっています。テレビ事業の衰退が止まらない中、グループとしては今や不動産会社が中核をなしていると言っても過言ではありません。
テレビでは苦戦するフジですが、グループ経営に関しては案外うまくやっているというのが今の現実と言えます。逆に言えば、不動産の利益があるからこそ、本業に力が入らないのかもしれません。