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日本郵政の危ないマネーゲーム。個人をはめ込む政府株売却の本音と建前=近藤駿介

機関投資家にとっては「仕方なく買う」銘柄

株価動向に関係なく配当金を分配金の原資に使える投資信託を除けば、機関投資家にとって日本郵政株は、時価総額が大きい(9月15日時点で約6.3兆円、ランキング9位)こと以外に投資する意義を見出しにくい銘柄だと言える。

日本郵政は「日本郵便」「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命」を束ねる持ち株会社である。従って、日本郵政の企業価値が上がっていくためには、子会社3社の成長が必要条件となる。

しかし、2012年に改正・成立した「郵政民営化法」によって、「日本郵政」とその子会社「日本郵便」には、郵便だけでなく、金融の分野にまで郵便局を通じてユニバーサルサービス(国民生活に不可欠で、全国あまねく利用が可能であることが確保されるべきサービス)を提供することが義務付けられるようになった。

株式会社というのは本来株主から集めた資金を有効に活用して利益を出していくことを目指していく組織である。つまり、利益を度外視したユニバーサルサービスを提供することと、株式会社の基本理念とは相容れないものであり、原則論から言えば郵便や金融部門のユニバーサルサービス提供は株式会社で行うべきでものはない。

仮に政府が日本郵政の株式の100%を保有して、ユニバーサルサービスを実施していくのであれば、実質的に公社と変わらないので大きな問題は生じない。

しかし、政府が日本郵政の株式を民間に売り出していくと事態は変わってくる。それは、ユニバーサルサービスを維持するために生じるコスト(損失)を、民間の株主に移転することになるからである。

日本郵政グループの「成長」は、ゆうちょ銀行頼み

日本郵政グループは、ユニバーサルサービス以外にも様々な制約のある企業である。

例えば、「ゆうちょ銀行」は17年6月に、ゆうちょ銀行に通常貯金の口座を有する個人に限定して最大50万円を貸し付ける「口座貸越による貸付業務」の許可を得たが、銀行でありながら銀行の本業とも言える企業向け融資や個人向け住宅ローン融資は認められていない

それゆえに、総資産209.5兆円(2017年3月期)を誇り、三菱東京UFJ銀行(総資産204.2兆円:同)と並ぶ巨大銀行でありながら、その66%に相当する138.8兆円もの資産を、有価証券投資に振り向けざるを得なくなっている。ちなみに三菱東京UFJ銀行の有価証券残高は、総資産の約20%の42.2兆に過ぎない。

ゆうちょ銀行は、日本郵政グループの連結経常利益7952億円(2017年3月期)の約56%、4420億円を稼ぎ出すグループの中核企業である。そのゆうちょ銀行は経常収益1兆8972.8億円の約93%に相当する1兆7650億円を「資金運用収益」をはじめとした有価証券投資関連業務で得ている状況にある。

つまり、日本郵政の成長は、ゆうちょ銀行の有価証券運用の巧拙に大きく依存している格好になっているのだ。

Next: ゆうちょ銀行の「危険な運用」そのツケを払うのは個人株主に

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