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荒れる2017年相場のキーワードは「カネ余り」その矛先はどこへ向くか?=矢口新

2017年はどんな年に?

日欧の金融政策は、少なくとも、2017年いっぱいは緩和的だ。超低金利と量的緩和が続く。これは、銀行経営の難しさと、カネ余りとを意味する。銀行は生き残りのために、投機的にならざるを得ず、その成否が、経営そのものを左右する。

欧州の銀行が立ち直る見通しが立たない。イタリア第3の銀行で、世界最古の銀行、モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行は12月21日、預金者などの引出し要求に即座に応じられるネット流動性ポジションは現在106億ユーロで、4カ月後には資金不足に至るとの見通しを発表した。

イタリア政府は23日に民間銀行支援のための200億ユーロの基金を設立、モンテパスキは直ちに資本注入を要請した。イタリアでは過去最大規模の銀行国有化となる。

一方、欧州司法裁判所は、スペインの住宅ローン問題をめぐり銀行の責任を制限した同国裁判所の判定を覆し、スペインの銀行に対し顧客への賠償を命じた。判決を受け、サバデル、バンコ・ポピュラール、カイシャバンク、リベルバンクなどの株価が急落した。

今回の判決は確定で、上訴は認められない。これによりスペインの銀行は顧客に対し40億ユーロ以上の返済を余儀なくされる。

欧州連合は機能していない。少なくとも、米サブプライムショックやリーマンショックなどの大型の危機には対処できず、不平等が拡大した。

ECBは23日、ユーロ圏の債務危機が始まって以来、ユーロ圏では富の集中が加速し、これまでにない資産価値の落ち込みにより貧しい世帯が苦境に陥っているとの調査結果を発表した。

ユーロ圏の世帯資産の中央値は14年までの4年間で約10%減少、10万4100ユーロに落ち込んだ。ギリシャとキプロスでは中央値が約40%下落、イタリアやポルトガル、スペインでも15%を超える大きな下落となった。

これに対して、ドイツの中央値は同じ期間に10%上昇、オーストリアやフィンランド、ルクセンブルクでも数値は上向いた。2010年には上位5%の世帯に純資産の37.2%が集中していたが、14年にはその率は37.8%に増えた。一方で下位5%の世帯は負債だけを抱えている。イタリアやスペイン、ポルトガル、ギリシャなどでは経済格差が広がった。

ブレグジットやトランプ氏の報道にも見られたように、メディアやメディア系識者は常に権力寄りだ。欧州政府のドイツ寄りの政策に対し、フランスを含むすべての政府が抵抗したが、例外なく転覆させられ、欧州政府寄りの新政府が登場した。それを選んだのは各国の国民たちだが、メディアやメディア系識者が果たした役割は大きい。

その流れを覆したのが、ブレグジットトランプ氏勝利で、年末のイタリアの国民投票がそれに続いた。2017年には3月のオランダ下院選挙から始まり、フランス大統領選挙ドイツ総選挙などと続く、先の国民投票で首相が変わったイタリアも総選挙が避けられないと見られている。

ユーロの中核国である独仏伊の国民が、仮にユーロ政府寄りの現政権に「ノー」を突き付けるようなことがあると、ユーロ、あるいは欧州連合の存続そのものが危うくなる。

私はその可能性はゼロではないと見る。ドイツはもとより、フランスやオランダも、ユーロの恩恵を得てきた国々だ。逆に言えば、大きな犠牲を払わずにユーロを見切ることができるとも言える。

ユーロ、欧州連合のデメリットが、メリットを凌ぎ始めている。例えば、ドイツは今ならユーロ体制を自国の利益のままに終えられるが、このまま存続させれば、支援負担や移民問題で、自らの身にも損失が膨らみかねない

ギリシャなどはGDPが毎年1割、2割と減少し続けている。人材や銀行預金は国外に流出し、港湾や有力企業などはドイツや中国のものとなった。こうなってしまうと、もはやユーロや欧州連合を離れられるだけの体力すらないのだ。

Next: 市場が歓迎した「原油の協調減産」はいつまで続くのか?

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