フロリダでの「第2幕」とその後に潜む真のリスク。首脳会談は飾りだ
ワシントンでの首脳会談の結果は、実は今回のトランプ氏との会談の中ではほんの一部にすぎません。形式にとらわれたくないトランプ大統領のことでもあり、米国政府としても、正式な「声明」には消極的なために、多くの問題が、これからの「非公式な私邸会談」あるいは「グリーン会談」で飛び出すリスクが大きいと考えられます。
トランプ氏にとっては、ゴルフや私邸への招待は、中国に対するけん制の面はありますが、日米間では単なる親睦とはとらえていないはずです。実際、彼の口からゴルフを共にすることについて、「昼食を共にするより、はるかに人物を理解でき、有効な会談の場になる」とのコメントがなされています。一部に、このゴルフにはロスチャイルド、ロックフェラー、モルガンといった兵(つわもの)が加わるとの情報もあります。
安倍総理にとって、これは「異例な厚遇」とは言い切れない面があります。ゴルフはかなりハードルの高い、リスクの大きな会談の場になりかねません。互いに熟知した者同士がゴルフを楽しむなら何ら問題がないのですが、一度会った程度で、方やハンデが5のシングル・プレーヤーのトランプ大統領に対し、やっと100を切るレベルの安倍総理の実力差は歴然としています。
ゴルフは人の性格がそのまま出ます。構えてもなかなか打たず、スロープレイで相手にイライラさせたり、ミス・ショットが出るとクラブを叩きつけたり、パットが入らないとふてくされたり、グリーンを蹴ったりする輩がいます。こういう人とは二度と一緒に回りたくないと思いますが、逆に気持ちよくプレーし、好感の持てる人はなかなかいません。それだけリスクが大きいのです。
自分よりうまい人に迷惑をかけまいとしてコースを走り回り、わかりにくい英語で経済交渉をされると、熟慮しないまま「イエス」と答えてしまい、その後ツイートで「安倍は米国の空母購入を約束」とか「自動車の自主規制を約束」などの文言がツイートされる可能性もあります。
トランプ大統領の性格上、不利な点は封印し、成果はすぐに公開すると思います。ワシントンの会談では具体的な成果を日本から引き出せていないので尚更です。
11月の非公式会談に本間ゴルフのクラブをプレゼントしたことが、今回のゴルフにつながりましたが、今回「手土産」にしたインフラ投資への資金支援も、それ自体は歓迎されても、インフラ投資で雇用が増えればそれはトランプ大統領の成果になり、資金支援する日本の貢献は見えにくいものです。日本によるドル債購入で円安になれば、これも反感を買います。
公平で米国の利益にもこだわるトランプ氏からすると、日本が提案する「イニシアティブ」は日本の対米黒字に対し、目に見えた縮小策にならないので、より具体的、直接的な不均衡是正策が求められる可能性があります。
かつて80年代に実施した「バイアメリカン」運動も成果には結びつきませんでした。米国から軍備を兆円単位で購入するか、不均衡の主役である自動車の対米輸出自主規制がすでに検討された模様で、いざとなるとこれが飛び出すかもしれません。