日本が得たもの(1)中国の脅威に対する安寧
日本からすると日米会談の狙いは、第1に日米同盟の地位確保と、米国の核の傘の下で防衛してもらい、中国からの脅威に対して「安寧」を得ることでした。
すでに首脳会談を前にして、米国からはマティス国防長官、ティラーソン国務長官から、「沖縄・尖閣諸島は日米安全保障条約第5条の対象」という約束手形を得ていましたが、あらためてトランプ大統領からもこれを確認したことは意味があります。
尖閣問題については、後ろに米国がついている、ということが、中国の動きに対して大きな抑止力になります。もっとも、米国は特別に軍事行動に出る気はなく、基本は外交交渉による、との立場を明確にしています。そのうえで日本自身が防衛力を強化する必要を指摘しています。
また日米の急接近は中国に無用の警戒を与えるとの配慮か、米国は「1つの中国」を認めるなど、中国への姿勢を軟化させてもいます。
日本が得たもの(2)異例な厚遇
多くのメディアは、今回の安倍総理の訪米では、米国が「異例の厚遇」を見せたと報じ、日米同盟の強化を重視する安倍政権周辺でもこれを「成果」とする動きが見られます。
確かに、フロリダの私邸に招かれ、トランプ氏所有のゴルフ・コースで27ホールのゴルフを楽しむことは、異例の厚遇に見えます。
しかし米国では、何事にも「フリーランチ」はないといいます。今回の接待についても米国メディアから、その費用は誰が持つのかと問われ、報道官は「トランプ大統領からのプレゼントだ」と答えています。トランプ氏にしてみれば、相応の「見返り」を期待する可能性があります。後に見ますが、フロリダでの会談「第2幕」がワシントン会談以上に重みをもってきます。
また、日本への異例な厚遇が中国を刺激しないよう、トランプ氏は対中強硬論を緩和し、習主席に歩み寄りを見せる「バランス」をとっています。実際、安倍総理の訪米直前にトランプ大統領は習近平国家主席と電話会談を行い、米中両国に利益となるよう、建設的な関係を習主席と協力して築いてゆくことを楽しみにしている、と言っています。東シナ海、南シナ海での米軍による軍事行動は考えにくくなりました。
日本が得たもの(3)為替、通商摩擦は一応回避
そしてもう1つの狙いが、日本の円安誘導や自動車産業への批判を回避することでした。日本側はこれらが誤解によるもので、日本は円安誘導をしておらず、自動車産業も米国で雇用拡大に貢献していることを説明し、理解してもらおうとしたようですが、米国の反応など、その成果については確認できず、為替問題は両国財務相会談に委ねられることになりました。
会談の場で紛糾しなかった点は成果ですが、解決はしていません。
日本が得たもの(4)新幹線の売り込み
経済協力の具体策については、改めて麻生・ペンス協議に委ねられましたが、安倍総理は、日本の新幹線技術の高さを訴え、これを使えばワシントン・ニューヨーク間がわずか1時間で結ばれる、と強調しました。インフラ投資での資金支援だけでなく、技術面でも日本を活用してもらうことで、日本経済にもプラスになるよう仕掛けています。