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トランプとイエレンの対立がもたらす高ボラティリティ相場に備えよ=近藤駿介

トランプによるバブル醸成 vs. イエレンのバブル潰し

トランプ政権とFRBの間に微妙な空気感が漂う中で行われたイエレンFRB議長の議会証言は興味深いものだった。

まず、金融緩和の縮小を遅らせることについては「FOMCが急速な利上げを求められ、させられ、景気を後退させるリスクになる可能性があるため、待ちすぎは賢明ではない」と、これまで繰り返してきた「behind the curve」のリスクに言及し、改めて利上げを含む金融引き締め段階であることを印象付けた。

さらに、今回の議会証言で印象的だったことは、「FRBのバランスシートの規模は最終的には現時点よりもかなり小さくなる」としたほか、「段階的に償還資金の再投資を停止し、米国債が中心の構成になることが望ましい」との考えを示したところ。この点は、日本のメディアはほとんど報じていない。

現在FRBは米国債2兆4600億ドルとMBS1兆7400億ドル、計4兆ドル以上の債券を保有しており、償還分は再投資し保有残高を減らさない政策をとっている。

こうしたなかでイエレン議長が「米国債が中心の構成」が望ましいと発言したことは、MBSの再投資廃止を視野に入れていることを示唆するもの。折しもS&Pケースシラー住宅価格指数(主要20都市)はリーマン・ショック前、2007年の水準に達してきているうえ、住宅着工許可件数も市場予想を上回ってきている。

また、トランプ大統領の主要政策であるインフラ投資に対する期待が高まれば、一気に不動産価格が上昇してしまう可能性がある。さらにその過程で金融規制が緩和されればバブルを醸成する条件が揃ってしまうことになる。

それを食い止めるために、FRBがMBSの再投資の廃止に動くというのは理に適っている。利上げ一辺倒でなく、MBSの再投資廃止の方がドル高圧力を高めることがないと思われるうえ、不動産価格に直接働きかけられるからだ。さらには、こうした「behind the curve」のリスクを軽減する措置が、金融市場の混乱を招かないものだとイエレン議長自身と考えていることも、MBSの再投資廃止を後押しするものだ。

トランプから何が飛び出すか?今月28日に要注意

今月28日にはトランプ大統領による予算教書演説に代わる議会証言が行われる予定になっている。「驚異的な税制改革」発言から20日後に当たることもあり、この議会証言でその実態が少し見えてくるはずだ。

具体的な姿がどのようなものであるかが分かってくるということは、投資家が抱く漠然とした希望と不安が具体的なものに変わるのと同時に、FRBが今後どのような対応をするかの判断材料も揃ってくることでもある。

トランプ政権とFRBは「金融規制緩和」と「財政」の両面で対立する構図になっている。この対立はトランプ大統領の議会証言を境にして「Do」の段階に入ってくる可能性が高いことを投資家は念頭に置いておくべきだろう。

6%のボラティリティが一段と低下するよりも、上昇する可能性の方が高いことは間違いないのだから。
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※本記事は有料メルマガ『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』2017年2月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』(2017年2月20日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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