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「老後不安による消費低迷」がトンデモ理論かもしれない最大の理由=藤井聡

山口広秀氏、吉川洋氏への「3つの質問」

もしも、東京大学名誉教授や元経済学会会長、さらには、元日銀副総裁の「誇り」にかけて、こうした「詭弁」や「フェイク」と呼ばれることそれ自身が濡れ衣に過ぎぬとお感じであるなら、ぜひとも下記3点のご質問に、正々堂々とお答え頂きたいと思います。

(質問1)第1に、分析本文で「~みられる」と書かれた推察内容を、なぜ、結論において「断定」的に記述されたのかをお答え頂きたい(あわせて、かりにそれに「理由」があったとしても、政治的影力を持ちうる可能性が濃厚な結論や要旨において「推察」内容を「断定」することは道義的に問題がないと言えるのかどうか、問題ないと言えるなら、なぜ問題ないと言えるのかを説明して頂きたい)。

(質問2)第2に、本レポートで記述されているデータから、如何にすれば「不安が消費を抑制している」という「因果関係」を説得力あるかたちで演繹できるのかを(本稿の指摘※を踏まえた上で)、理性ある読者ならおおよそ納得できるかたちで説明して頂きたい(※「幾分若年層の世帯所得が持ち直しつつある中、34歳未満世帯だけが消費性向を縮退させている」というデータに基づいて「不安が消費を下げている」と推論することは、論理的に正当化できない、という指摘)。

(質問3)第3に、本レポートで記述されているデータから、如何にすれば『持続可能な税・社会保障制度を構築すれば、(消費に影響がでる程に十分)不安が払拭される』という「因果関係」を説得力あるかたちで演繹できるのかを(本稿の指摘(※)を踏まえた上で)、理性ある読者ならおおよそ納得できるかたちで説明して頂きたい。(※今国民が老後に不安を抱えているという複数のアンケート結果は消費と老後不安の間の因果関係の「根拠」にはなり得ないということ、ならびに、34歳未満世帯だけが消費性向を縮退させているという事実は、『持続可能な税・社会保障制度を構築すれば、不安が払拭される』という主張と整合するどころかむしろ矛盾しているいう指摘)。

本稿が、我が国の反映に繋がる建設的かつ理性的な議論の契機となりますこと、ならびに、筆者らが分析レポートを公表するにふさわしい、科学者としての十分な知性のみならず「誠実性」を所持されておられることを心から祈念しつつ、本稿を終えたいと思います。

付録1:若年世帯だけ消費性向が下がる理由についての様々な仮説
若年層だけ消費性向を下げている理由としては、若年層だけ貧困化が激しく貧困化が激しい世帯の方が消費性向を下げがちだからだ、と言う可能性も考えられます(なお、両氏が指摘する若年層の世帯所得が幾分もちなおしは、失業率や、消費性向と貧困化との関係の非線形性などを加味すれば、上記可能性を棄却するものではありません)。

あるいは、「デフレ世代のコーホート効果(世代効果)」によって、若年層の消費性向が下がってきている可能性も考えられます。実際、交通行動の時系列データから、若年層の移動数が著しく低下している「外出離れ」現象が生じていることが知られていますが、そのレポートでは、「年金等に対する不安」以外の様々な理由について様々に分析、検討されています。
https://blogs.yahoo.co.jp/mimasatomo/43400924.html

この「外出離れ」現象は、若年層の消費性向低下と関連している可能性が十分考えられますが、この外出離れの原因が「年金等に対する不安」であると考える根拠は、相当に乏しいように思われます。

つまり、両氏の推察自信の正当性もさることながら、それ以外の様々な可能性も考えられる以上、因果プロセスについて断言するにはさらなる分析が不可欠なのです。にもかかわらずこのレポートにはそうした分析がほとんど全くといっていい程の水準で掲載されていません。この点から言っても、このレポートは科学的に正当化することは原理的にほとんど不可能であると言うこともできます。

付録2:詳細は、下記論文を参照下さい「柳川・沼尻・山田・宮川・藤井:新自由主義の詭弁性とその心理的効果に関する実証研究、土木計画学研究・講演集、CD-ROM、55, 2019」
(※本稿の見解はすべて藤井聡個人のものです)

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三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年12月5日号より

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