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「老後不安による消費低迷」がトンデモ理論かもしれない最大の理由=藤井聡

「推察」そのものにも、相当な「無理」がある

しかも、この「両氏の推察」それ自身も、理性的に正当化しがたいものです。

そもそも両氏が推察したように「年金等についての将来不安が高くなれば、消費性向を下げる」というメカニズムがもしも今の日本で支配的なら、そういう現象は34才以下だけでなく、35才以上世帯でも生じるはずです。

というよりむしろ40代や50代の「老後」に近い世代の方が、20代や30代よりも「年金等への将来不安が高まれば、消費性向を下げる」ことすらあり得ます。ですが、40~50代には、そういう傾向は見られません。この事実は、「年金等についての将来不安が高くなれば、消費性向を下げる」というメカニズムが働いてい「ない」可能性をすら示唆する事実だと解釈することもできるでしょう。

いずれにせよ、34才以下世帯で「だけ」消費性向が下がっているという事実から、「年金等への将来不安が今の日本人の消費性向を下げている」という結論を導くには、相当な無理があると考えられます。
(※従いまして、当方の「学者」としての感覚から言うなら、この様な無理ある推察は、比較的規準が緩い「学術論文」ですら、まず認められない水準のものでは無いかと思います。より詳細な議論は付録1をご参照下さい)

「若年世帯の不安」は年金等でなく「デフレ」だという可能性

百歩譲って「将来不安が日本人の消費性向を下げている」ということが真実だとしても、その不安が、両氏が言う「年金等」という「老後不安」であるとはまったく言えません(筆者らが示してている、今国民が老後に不安を抱えているという複数のアンケート結果は、消費と老後不安の間の因果関係の「根拠」にはなり得ません)。

当然ながら、「デフレ不況」およびそれに伴う「将来の所得縮小」「失業」に対する不安それ自身が、不安の根源である可能性も考えられます。

と言いますか、両氏の示したデータや彼らの推察から演繹される「若年層だけが不安に感じ、非若年層が不安に感じていない」という状況を説明するには、年金等よりもデフレそれ自身に対する不安の方がより説得力ある原因だと考える方が自然とも言えるしょう。そうした「可能性」は、若年層の方が一般に失業率が高く、所得が低いという事実とも整合します。

さらに言うなら、もしも両氏が主張するような「持続可能な税・税社会保障を作ることで不安が低迷し、消費が拡大する」ということが真実なら、彼らが主張した2014年の消費増税によって消費は拡大すべきところですが、実態はまったくその逆に、消費は大きく低迷したことは、周知の事実です。

こう考えれば、その不安を払拭するために「年金等の社会保障制度を持続可能なものにする」という、両氏が次のように「断定」する対策が適当だとは、(残念ながら)正当化できない、という真実も見えて参ります。

…将来不安を払拭するためにも、政府が責任ある形で、説得力のある税・社会保障のプランを明示し、それを前提に消費者が長い目で見た生活設計を組み立てることができるようにすることが大事である。単に消費者にとって耳触りのよいプランを示すことではなく、確度の高いプランを明らかにすることが重要である(※レポートP18より)。

出典:理事長室研究レポート「低迷する消費」を公表 – 日興リサーチセンター

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