金融業界のプリンタービジネス「ファンドラップ」
通常の投資信託は、販売時手数料が3%程度(オンライン証券では無料もあります)、信託報酬が1~2%(内訳はザックリと運用会社約50%、販売会社への管理費として約45%、信託銀行の管理費用で5%)ほど掛かります。つまり購入後3年程度で、元本の7%~8%程の額を費用として取り込む計算です。
これに対してファンドラップでは、投信の販売手数料は「何度売り買いしても年間2%で済みますよ」「しかも専門家が選びますよ」という謳い文句にしている商材です。とはいえ信託報酬は掛かりますから、今のご時世では決して低コストとは言えません。
一昔前なら、銀行預金でも数%の利息が付くのに対して、投信信託が3%の販売手数料ですから、元本保証の預貯金が選ばれました。ですが、この超低金利下では「何か運用を」と考えるわけです。
ところが、運用するとしても本来はゼロ金利の世界なのですから、論理的にはうまい話があるはずもないのに、まるで儲かりそうな幻想を抱かせて、「全て込みの年間2%で済みますよ」と言いつつ、実は預かっている限り(労せず)毎年着実に収益が見込めるビジネスモデルに変身させています。
ファンドラップで販売会社が儲ける仕組み
証券会社にとって、投資信託の販売・管理ほどコスト(手間暇)のかかる商品はありません。にもかかわらず、株式や債券の売買と違って短くても数カ月以上、下手をすれば何年間も資金が固定化してしまう、資金効率の悪い商品です。位置付けとしては、顧客から預かる資産を増すための入り口(貯蓄性)商品であり、かつ信託報酬によって自社金融グループに着実に年間1~2%の収益をもたらすもの。そして、預かってさえおけば、違う商品への乗り換えの原資ともなり、数字が読める貴重な資産…ということです。
とはいえ手間がかかる商品ですので、販売会社には入り口で3%ほど、運用期間中でも1%近くの管理収入が得られて、かつ実際の証券取引に掛かる費用までグループに取り込んだり(最近は規制がありますが)、しかも乗り換える度に新たに3%の販売手数料が入るように…という建て付けにしなければならない程の高コスト型商品なのです。
これに替えて、それら手間賃を抑える代替手法として、年2%だけとはいえ一度預かってしまえば、毎年チャリンチャリンと落ちるビジネスは美味しいビジネスになります。仮に1,000億円の預りがあれば、年間20億円の固定収入を見込めますし、契約がある限り顧客は離れません。
安くて(場合によっては赤字で)も本体機器を売りさえすれば、定期的な収入を見込めるプリンタービジネスと似ていますね。
よく考えれば、今の円市場は市場金利が限りなくゼロに近く、金融機関にとっても運用難が続くなかで、無リスクで毎年2%+信託報酬を得られるビジネスは美味し過ぎる、つまり顧客側は利益を出しづらい商品であるということに気が付くはずです。
やはり独自に勉強し、できるところから自分で運用しなければ、この超低金利下ではなおさら満足な成果は得られないということです。
『億の近道』(2017年2月23日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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