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理論値を見て現実を「アホ」と罵る愚かさ。適正水準はドル円で10円も幅がある=高梨彰

株や為替の理論値は、実際との乖離があるときの方が多いくらいです。しかし、適正値を根拠に、少しの変化を「アホ」とかヒステリックに揶揄する人がいます。(『高梨彰『しん・古今東西』高梨彰)

※本記事は有料メルマガ『高梨彰『しん・古今東西』』2018年3月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:高梨彰(たかなし あきら)
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。

値動きを「おかしい」と揶揄しても時間のムダ。買い場を探すべき

2016年11月以来の円高水準

ドル円がお久しぶりの105円割れ。気が付けば、ドナルド・トランプが大統領選に当選した2016年11月以来の円高水準です。

「FOMCの見通しではより利上げに積極的となったのに、ドル安とは…」と未だにブツクサ言う市場関係者のコメントもみられます。

しかし、日々の相場に1つの均衡点を求めるのも難しいものです。購買力平価など「理論値」とされる値はいくつかありますが、ドル円にしても10円単位で、しかも何年にも渡って「理論値」から離れることもしばしばです。

むしろ「理論値」から乖離があるときの方が多いくらいです。

理論値は、理論値でしかない

株価にしても一緒です。株価の均衡点を推し量る値の1つにPER(株価収益率:Price Earnings Ratio)があります。日経平均株価の予想PERは12.68倍と3月23日の朝刊に書いてあります。日本株に関わる人に話を聞くと「PER13倍は割安」、「PERは14~16倍くらいが適正」なんて答えが返ってきます。

PERはP/E Ratioと書くように、P(価格)÷E(利益)の値です。このEを「1株利益(EPS)」と言うのですが、直近のEPSは約1,700円です。PER1倍分で、日経平均株価は1,700円変わるということも意味します。

ということは「14~16倍が適正」といっても、その幅は1,700円の2倍、3,400円あります。3,400円も動けば、業界もメディアも大きく取り上げるはずです。そんな程度の幅を持たせて「理論値」や「適正」な値を示しているのです。

言い換えれば、ドル円なら10円、日経平均株価なら1,700円程度の動きは「有り得る範囲」です。

不思議なのは、普段この手の「適正」な値を論拠に使う人に限って、FOMC後のちょっとした変化を「おかしい」とか「アホ」とかヒステリックに揶揄するという点です。

「日経平均3万円」予想にしても、「現在のEPSは1,700円。10%増益なら1,870円。ここからPER16倍で計算すれば、29,920円。ほら3万円はすぐそこでしょ」こんな論拠を示したりします。

市場価格の「理論値」なんて、そんなものです。大らかに構えるに限ります。

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