現実味を帯びてきた「安倍退陣」シナリオ
安倍総理にとっては内憂外患による失地挽回を賭けた日米首脳会談であったが、失地挽回は叶わなかったといえる。
支持率が20%台まで低下した安倍総理が失地挽回できなかったことを考えると、金融市場は「安倍退陣」を現実のシナリオとして意識していくことになるはずである。それは、為替や株式市場にとって重荷になる可能性が高い。
物価統計に注目が集まる
4月に入ってから政治面での大きな動きの陰に隠れて忘れかけられている印象のある経済動向であるが、今月末にかけて再び注目を集めるかもしれない。注目すべきなのは物価統計である。
それは、米国の携帯電話の料金プラン価格が2016年4月から2017年3月にかけて過去16年で最大の12.9%の下落をしていたことで、物価統計に下方圧力が掛かっていた可能性があるからだ。
これまで完全雇用状態にあるなかで、物価が上昇してこないことをイエレン前FRB議長は「謎」と称するとともに、こうした携帯電話料金の値下がりという一時的要因が物価統計を押し下げている可能性に言及してきた。
4月11日に発表された3月の米国コアCPIは前年同月比2.1%上昇と、1年ぶりの高い伸びとなり、FRBの目標である2%に乗ってきた。
こうした携帯電話料金の値下がりという一時的統計要因が剥奪していくなかで、コアCPIが1年ぶりに前年比プラス2.1%となったことは、今後、経済統計上で物価上昇が確認される可能性を感じさせるものである。
FRBが物価指標として見ているのはコアCPIではなく4月30日(月)に発表されるPCEコアデフレーターである。今のところ3月のPCEコアデフレーターの予想は前年同月比1.8%上昇となっているが、結果が予想を上回るものとなれば、「謎」の正体が携帯電話料金の値下がりだったという見方が強まっていく可能性が高い。
利上げペースが加速するか?
コア物価統計には含まれてはいないが、ここに来て原油価格が上昇基調を示し68ドル台まで上昇してきている。
こうした状況下、統計上で物価上昇が確認されることになれば、FRBの利上げペースが上がる、さらにはイールドカーブがスティープ化することは十分に予測されることである。
4月17日には0.433%まで縮まった10年国債と2年国債のイールドスプレッドは、週末には0.498%と0.5%近辺まで戻してきている。
物価上昇が経済統計に反映されやすい時期に近付いてきていることで、米国の長期金利には上昇圧力が掛かりやすくなっている。長期金利の上昇圧力が増す局面で重要なのは、実体経済が金利上昇圧力に耐えられるほど堅調であるという証明である。
物価上昇が経済統計に表れやすくなり、長期金利に上昇圧力が加わりやすい局面で最悪なのは、保護主義的な政策などの影響も加わり景気にピークアウト感が出て来ることである。