論理的に動くトランプ大統領
トランプ大統領は、外交と通商問題の両面で強硬姿勢を強めている。
多額の貿易赤字を抱える中国に対しては、中国が「お付き合い」することが不可能な規模の制裁をチラつかせることで市場開放などの譲歩を勝ち取った。
また、ロシアに対してはTwitterでミサイル攻撃を予告することで、シリア空爆に対する軍事的な反撃を封じ込めることに成功した。
制御不能に見える暴君は、正しいかは別として、言われている以上に論理的に動いている。
トランプ政権のパワーバランスが大きく変化してきた
本題から外れるが、今回の日米首脳会談で印象的だったのは、イヴァンカ氏とクシュナー氏が出て来なかったことだ。
最高レベルの機密情報を取り扱える権限を失ったことが報じられた2月末以降、クシュナー氏はほとんど政治の表舞台に出て来ていない。それだけでなくイヴァンカ氏も平昌オリンピックでその姿を見せた以外は姿を見せていない。
それと共に強硬姿勢を強めるトランプ政権。こうした動きは2年目に入ったトランプ政権のパワーバランスが1年目とは大きく変わって来ていることを感じさせるものである。
北朝鮮「核凍結宣言」でも喜べない日本
拉致問題で唯一の小さな成果を挙げるにとどまった日米首脳会談直後の週末に、今度は北朝鮮から「核凍結宣言」が飛び出した。
核実験と中長距離、ICBMの実験を中止するという今回の発表は、平日であればヘッドラインだけで株式市場は好感したはずである。しかし、週末に発表されたことで、「核凍結宣言」が日本にとって必ずしもいい内容ではないことが、市場が開く前に明らかになってしまった。安倍総理はツキにも見放されてしまったのかもしれない。
北朝鮮による米国本土に届くICBMの実験中止表明は、米国にとって歓迎するものであり、トランプ大統領にとっても強い圧力をかけた成果だとアピールできる絶好の材料でもある。
しかし、日本に届く中距離弾道ミサイルが含まれなかったこと、北朝鮮が実質的に核保有国として存在し続ける可能性があることを考えると、日本は今回の北朝鮮による「核凍結宣言」を受け入れることは難しい。
トランプ大統領にとって受け入れやすく、安倍総理にとって受け入れにくい北朝鮮の「核凍結宣言」。北朝鮮から繰り出されたクセ球は、北朝鮮問題に関しては「100%一致している」ことを強調してきた安倍総理の内角を厳しくえぐるものになりかねない。
トランプ大統領が「核凍結宣言」を受け入れた場合、「100%一致している」とはいえない安倍総理は苦しい立場に追い込まれることになる。それは、拉致問題に関して「100%一致している」ことを示した今回の日米首脳会談の小さな成果を水泡に帰すものでもある。