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現役と定年後でこんなに違う、長期投資家がとるべき自分に合った戦略とは?=栫井駿介

バリュー株投資を行うにしても、目的や状況によってその人に合ったやり方は異なります。今回は現役と定年後で、それぞれの運用でとるべき有効な戦略を考えましょう。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

大きな違いは「持ち時間」。余裕がない退職世代が使える奥の手は

世代ごとにベストな投資方法は違う

投資は、目的や状況によってその人に合ったやり方があります。同じバリュー株投資でも、それぞれが置かれた状況によって違ったやり方があってしかるべきです。特に、現役世代と退職世代の運用では大きな違いがあります。

この記事では「現役世代」「退職世代」を以下のように定義します。

現役世代:給与などの定期的な収入があり、そこから投資資金を捻出できる。投資期間は10年以上の余裕がある。

退職世代:貯蓄や退職金などのまとまった資金を運用し、追加の資金拠出は望めない。年齢を考えると、10年は長すぎる。

大きな違いは「定期的な収入があるか」「10年以上の超長期で考えられるか」です。世代だけでなく自分がどちらの状況に近いか考えながら読んでみてください。

現役世代:「割安買い+ホールド」で時間を味方につける

長期投資家を悩ませるのは、「相場がいつ急落するか」ということです。いくら割安株を買ったとしても、相場全体の下落を一時的には逃れることができません。資産も目減りしてしまうでしょう。

しかし、いくら急落したとしても、相場はやがて回復します。何年かかるかはわかりませんが、時間に余裕のある現役世代にとっては大きな問題ではありません。優良・割安銘柄を持っている限り、相場の回復をじっと待っていればいいのです。

「定期収入」「時間の余裕」は、現役世代の大きな強みです。積み上がる預金から順次割安銘柄を買い付ければ、時間の経過とともに資産は増加していくでしょう。割安と確信できる銘柄を持っている限り、多少上下しても慌てて売る必要はありません。

定期収入があれば、相場下落時にも割安な価格で買いを続けることができます。逆に、相場過熱時には無理に割高なものを買わないことで、相場下落のショックを和らげることができるでしょう。

現役世代にとって、相場変動は無視して良いものです。どんな相場にあろうとも、絶対基準で割安なものを淡々と買い続ければ、10年も経てばきっと成果が出るでしょう。ドルコスト平均法の応用とも言えます。株価の変動に気を揉む必要もありません。

バフェットが実践しているのはまさにこの方法です。彼がCEOを務めるバークシャー社は保険会社ですから、保険料という定期収入があります。その収入を投資に充てるからこそ、買い持ちの姿勢を崩さずにいられるのです。

退職世代:「配当+ヒット&アウェイ」でリスクを回避

退職世代の運用は、貯蓄や退職金などまとまった資金があることが強みです。一方で、それ以上の積み上がりが難しく、年金で生活費が賄えなければ資産を食いつぶす形になります。

時間をかけて増やすと言っても、待てる時間には限界があります。死ぬときに資産額がピークを迎えても仕方がないのです。

現金の積み上がりが見込めず、時間を味方につけるのが難しいとなれば、資産が目減りするリスクを可能な限り回避しつつ、資産増加のチャンスに抜け目なく乗る必要があります。

リスクを抑えるという観点では、安定配当の高利回り銘柄をうまく使うと良いでしょう。キャッシュフローが安定していて、かつ利回りの高い銘柄の下落余地は限定的です。配当収入があれば、生活費による資産の減少も抑えることができるでしょう。

もちろん、配当だけでは資産の増加には限界があります。大きな資産増加を目指すなら、キャピタルゲインを活用しなければなりません。

現役世代のような買い持ち戦略は必ずしも適切とは言えません。現役世代なら相場の回復をただ待っていればいいのですが、退職世代にはその時間の余裕が与えられていません。回復するのが10年後では遅いのです。

そこで提案するのが、「ヒット&アウェイ」方式です。明らかな割安銘柄に投資し、一定の上昇率(例えば30%)に達した時点で機械的に売却します。そこからさらに上がる可能性はありますが、必要以上の欲を出さないことで相場が崩れるリスクを回避するのです。売却資金は、再び大きく割安な銘柄が現れるまで待機させます。

この戦略を実行するには、保有銘柄を入れ替えつつ、常に資金余力を用意しておく必要があります。追加資金が見込めない以上、余力がなければ割安銘柄を買うチャンスをみすみす逃すことになってしまいかねません。

Next: 時間に余裕がない退職世代でも使える「奥の手」とは?

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