リーマン危機のあと、4.6倍に巨大化した中国企業の負債
2008年のリーマン危機(米国の金融危機)のあと、中国は、対米と対欧州の輸出減によるGDPの低下を補うため、国営建設業への融資を増やし、住宅建設を増加させました。
GDPの構成比で示したように、2008年にはGDPの41%だった総固定資本形成は、09年が45%、10年が47%と上がっています。
住宅建設は、企業負債によって行われたのです。2008年以降の中国の負債は、以下のように増えています(単位:兆ドル)。
<リーマン危機後の部門別負債(データはBIS)>
政府 世帯 企業 合計 GDP比 名目GDP
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2008年 1.2 0.8 3.9 5.8 145% 4.6兆ドル
2010年 1.8 1.4 5.1 7.4 180% 6.1兆ドル
2012年 2.6 2.2 8.9 11.9 187% 8.6兆ドル
2014年 3.7 3.3 12.1 14.1 217% 10.5兆ドル
2016年 5.0 4.7 18.1 27.8 255% 11.2兆ドル
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GDP比 46% 43% 166% 255%
2008年には3.9兆ドル(429兆円)だった企業の負債は、8年後の2016年には、18.1兆ドル(1991兆円)と4.6倍に増えています。年間で19%ずつ増えてきたのです。多くは、住宅建設のためです。
他方、世帯の負債は0.8兆ドル(88兆円)から4.7兆ドル(517兆円)と大きく増えてはいますが、GDP比では43%でしかない。建設された住宅が全部売れていれば、住宅建設のために借りた企業負債は、増えません。代わりに、世帯のローン負債になるからです。
企業の負債が増えたままであり、世帯負債に移行していないことの意味は、景気対策のため建設された多くの住宅が、売れ残って在庫になっていることを示します。
ところが在庫の住宅価格が下がっていません。銀行から企業に追い貸しが行われ、建設企業は「在庫の投げ売り」をしていないからです。このため政府の住宅価格の統計は下がらず、むしろ上がっています。
共産主義では、「在庫を売れる価格まで下げる」という市場経済がない。国営企業に対しては、不良債権という概念もない。日本の、政府系の独立行政法人の負債と同じです。