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それでも米9月利上げが有力となる3つの根拠~中国、原油、要人発言

9月16日~17日に開催される米FOMC(連邦公開市場委員会)の焦点は、なんと言っても、米国がこのタイミングで利上げに踏み切るか否かです。世界的な景気減速懸念から利上げ先送り観測も根強い中、元ヘッジファンドマネージャー「E氏」はそれでも9月利上げ説を支持、その根拠とは?

9月利上げが最有力。元ヘッジファンドマネージャー「E氏」の考察

根拠1: FRBは米経済に一定の自信を持っている

現時点で、FRBが考えている利上げ判断のポイントは以下の点です。

  • 労働指標の改善が続く
  • インフレ率が2%程度まで上昇
  • 以上の事象を確認後に利上げ

インフレ率の判断材料として重要な個人消費支出(対前年同期比)は現在1%程度です。現在は原油安が足を引っ張っているために、前年同期での原油安の影響が消えるまではインフレ率の上昇は見込みにくいです。このところの原油安の再燃で、この影響が消える時期が後連れ気味になっています。

WTI原油先物 週足(SBI証券提供)

WTI原油先物 週足(SBI証券提供)

しかし、現在の最安値の水準が続いたとしても、年内には原油安の影響は消えるでしょうから年内利上げは確実です。しかも、このところの要人発言を見ると、足元の原油安は一時的としていてあまり重要視していないようです。

FOMCミーティングの討議資料として使われるベージュブック(地区連銀経済報告)の直近版は、「大部分の地域で景気拡大」という表現なので、現時点でFRBは米経済についてあまり心配していないと言えるでしょう。

根拠2: 過去の要人発言と、FOMC後のイエレン議長会見の有無

FOMCが近づいているため、先週はFOMC関係者の要人発言がありませんでしたが、過去3週間の要人発言を整理するとこんな感じです。

9月利上げ

ブラード総裁 中立 経済良好で強い、ただ、10月利上げも可能なように、10月FOMCの後にも会見を設定すべき
メスター総裁 タカ 経済良好
フィッシャー副議長 中立 月利上げの可能性が弱まっているという判断は避けたい
ラッカー総裁 タカ 早く利上げを
ダドリー総裁 ハト 株安を受けて9月利上げの根拠が薄まっているように思える(8月26日)

10月以降?

コチャラタ総裁 ハト 近い将来というのは年内全てだ
ロックハート総裁 ハト 10月会合は生きている

もし今来週中に「10月FOMCのあとのイエレン議長会見」が設定されれば10月利上げの可能性も高まるでしょうが、現時点で10月FOMC後の会見が用意されていない以上、会見のある会合は9月か12月だけ、このいずれかが利上げ時期として有力になります。

また、9月利上げに慎重なハト派も、12月というよりは10月というニュアンスが多いので、10月がなければ9月を採用する可能性が高いです。

根拠3: FRBは中国の中央銀行ではない

これは過去2週間変わっていないのですが、このところ急速に9月利上げの見方が後退しています。

しかし、その根拠は薄弱です。各種報道記事で「中国懸念」が取り沙汰されますが、米国は過去に自国の経済要因以外で、金融政策を決めた事はほとんどありません。その証拠に、FOMCの討議資料として使われるベージュブックは米国内の経済状況のみ書かれています。そして、このところの要人発言でも、中国云々という言葉は一度も見たことがないでしょう。

米国の利上げ時期を検討する際に中国云々というのはいかにもナンセンスで、日本で言えば、黒田日銀総裁が「中国がバブルなので追加緩和を……」などと説明するのと同じです。昨年10月末の追加緩和時に、黒田氏は中国の“爆買い”効果を考慮していましたか?

にもかかわらず、マーケットが利上げ後退を期待しはじめたのは単に「慣性」が働いているからに他なりません。つまり、「過去8年以上も利上げがなかったので、発表がない限りいつ利上げをするか分からない」ということです。

過去3週間の要人発言を拾っていくと、今月利上げが後退する理由はほとんどありません。仮に、株価低迷や中国懸念が原因であったとしても、肝心の株価が期待で戻った以上は利上げ後退の材料にはならないのです。

以上を考慮すると、私は依然として今週のFOMCでの利上げ決定が最有力と考えます。いま不透明なのは、今年中の利上げが1回か2回かという点だけかと思われます。

9月利上げ、金利先物市場にはサプライズも~FFレート見通しドット分布

FOMCメンバーによるドット分布では、年末のFFレートは0.625%になっているのに、金利先物市場は年末までの利上げもあまり織り込んでいないのです。

この意味するところは非常に重大です。仮に、今週利上げがなくてもサプライズにはなりませんが、利上げがあった場合はかなりのショックになる可能性が高くなってきたのです。

今後のFOMCの日程は、今週16~17日、10月27~28日と12月15~16日しかありません。従って、0.625%にする選択肢はかなり少なくなります。

現時点で私が考える利上げの時期と幅については先週と変更ありません。現時点で10月FOMC後の会見が発表されていない以上、10月利上げの可能性もないと思われます。

  • 第1回目 9月FOMC(可能性95%) or 12月利上げ(可能性5%)
  • 第2回目 12月FOMC

さらに、市場がまだ織り込んでいない年内複数利上げを依然として見込んでおり、従来同様に初回25bps、2回目25~50bpsといった利上げ幅を予想していますが、これは5月雇用統計以降変えていません。

ただ、2回目の利上げは、従来はほぼ100%年内に行われると想定していましたが、昨今の世界的な株安を受けて、8割が12月、2割が年明け以降と、2回目利上げは年明け以降の利上げの可能性も出てきたと考えています。

先月FOMC以降の米重要指標は雇用統計でしたが、これは失業率がコンセンサス以下の強い雇用を示していたのに対し、非農業部門雇用者数はコンセンサス以下になっているというまちまちの結果でした。明確にポジティブでもネガティブでもない以上は、過去3ヶ月ほどの要人発言による利上げ判断のままで変更ないでしょうから、かなりの確率で今週に利上げが決定されると考えています。

利上げ決定がなされなかった場合、一時的なリスクオンになる可能性はありますが、上で書いたようにマーケットはかなりの確率で今月利上げを見込んでいない以上、その効果は限定的でしょう。

一方、利上げになった場合は、かなりのショックになると思われます。

元ヘッジファンドE氏の投資情報』(2015年9月15日号)より一部抜粋
※太字とチャート画像はマネーボイス編集部による

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