受賞の報道後、スキルス胃ガンの相談が急増
そうしましたら、先日(10月3日)の、BuzzFeed Japan に『ノーベル賞受賞で相談殺到誤解してほしくない免疫療法』という記事が出ていました。
この記事は、ノーベル賞受賞が10月1日に一斉に報じられてから、「スキルス胃ガン患者会のNPO法人に、相談の電話が殺到している」というところから始まります。
スキルス胃ガンというのは、通常の胃ガンとは違う機序を持つもので、進行がとても早く、また若い人に多いのも特徴です。
そのスキルス胃ガン患者会に、報道直後から、「私もオプジーボの治療を受けたい」といったような患者さんたちからの電話が次々とかかってきたのだそうです。つまり、テレビなどでの「ノーベル賞受賞」の報道により、すでに多くの人たちが、「この薬を夢のガン治療薬だと思っている」ことがうかがえるのです。
たとえば、まず、その効能については、以下のように書かれてあります。
- オプジーボは、基本的に他の抗ガン剤での治療の後に進行・再発したガンにしか効果が証明されていない
- オプジーボの効果が出る人は投与した人全体の「2割」程度
- 副作用が重い(皮疹、甲状腺機能の悪化あるいはリウマチやギランバレー症候群等の自己免疫疾患)
つまりこれは、抗ガン剤での治療後に治らないか再発したガンの治療にだけ効果が証明されていて、しかも効果があるのは全体の2割ほどで、その上かなり重い副作用がある…というものです。
こういう書き方は問題があるかもしれないですが、いわゆる抗ガン剤の治療での「問題」と同じような危険性を持っているものでもあります。
オプジーボは「夢の新薬」か? 期待が独り歩き
この問題はずいぶんと以前から言われていまして、たとえば、特定非営利活動法人「日本肺癌学会」という組織がありますが、日本肺癌学会は2015年12月に『抗PD-1抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)についてのお願い』という「患者宛の文書」を発表しています。
その内容は、がん情報サイト「オンコロ」にありますが、内容の項目は、以下のようなもので先ほど挙げたことと同じようなものです。
- オプジーボはすべての患者さんに有効な「夢の新薬」ではない(8割の方に効果が乏しい)
- オプジーボには副作用があり、重篤になる場合もある
- オプジーボが使えない患者が存在する(膠原病やリウマチ、間質性肺炎の患者は使用できない)
日本肺癌学会がわざわざこのような文書を発表したほど、患者の方々のあいだに「期待が独り歩き」していたのです。
そして今回の件で、また「新たな期待の独り歩き」が始まる可能性もないのではないかもしれません。
そして、さらなる問題はこの薬効の方だけの話ではないです。