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ウクライナの挑発で全面戦争に誘導されるロシア。背後で笑う米国の思惑とは=高島康司

アメリカとウクライナによる誘導

これが、日本を含めた欧米の主要メディアの報道だ。国際法を無視してウクライナを攻撃し、全面戦争さえしかねない国としてロシアを強く非難する論調だ。トランプ大統領も強い不快感を表し、11月30日にアルゼンチンのブエノスアイレスで行われるG20のサミットでは、予定されていた米ロ首脳会談の中止を示唆している(※編注:原稿執筆時点11月30日)。

しかし、このケルチ海峡における今回の衝突を詳しく見て見ると、これはアメリカとウクライナによって計画的に誘導されて引き起こされた事件である可能性が極めて高いことに気づく。これは、ロシアを挑発し、より規模の大きな戦争を引き起こして、ある特定の目的を実現するために画策された事件であると見ることができる。

当メルマガでは、2010年12月に北アフリカのチュニジアから始まり、中東全域に拡大した「アラブの春」や、2004年から2007年ころにかけて中央アジアの旧ソビエトの共和国で広まった「カラー革命」のような民主化要求運動が、米国務省によって準備され、仕掛けられた事件である事実を詳しく紹介してきた。

アゾフ海のケルチ海峡における今回の衝突も、同じように仕掛けられたものである可能性は大きい。

2003年の取り決めと、9月の航行

このように言うと、なんの根拠もない陰謀論ではないかとの印象を持つかもしれない。しかし、ロシアやウクライナの英語メディアなどから情報を集めると、やはりこの事件の背後には、ロシアとの戦争を画策するアメリカやウクライナの計画があると言わざるを得ないのだ。

確かに国際法からすると、海軍の艦艇であっても海峡通過などの平和的な目的であれば、どの国の排他的な海域であっても、事前通告なしに通過できることになっている。1989年、当時のソ連とアメリカはこの取り決めを明確化し、それが現在の国際法になっている。その意味では、ウクライナ海軍の艦艇はケルチ海峡を自由に通過する権利があるので、それを攻撃し拿捕したロシアは非難されてしかるべきだと見える。

しかし、旧ソビエトが解体し、ウクライナが独立してからは、アゾフ海の領有権が問題となった。そして2003年の両国の取り決めでは、アゾフ海はロシアとウクライナ両方に帰属する海域となった。

この取り決めで重要なことは、両国の船舶がケルチ海峡を通過するときの規則が定められたことである。ロシアもウクライナも、自国の船舶が通過するとき、クリミア、ケルチ港の当局に事前に連絡し、通過する旨を伝えることになっているのだ。

この2003年の取り決めはクリミアがロシアに併合された現在も生きており、両国はこの規定にしたがって海軍艦艇を含む船舶の海峡通過を処理してきた。事実、今年の9月にはウクライナ海軍の艦艇がこの規定に従い、問題なく安全に通過している。海峡を通過するとき、ロシア安全保障省の係官がウクライナの艦艇に乗り込み、水先案内をしている。

ロシアは今回の攻撃の発端となった海峡通過が、ウクライナ海軍による事前通告なしに強行され、それはロシアを挑発する意図のもとになされたとウクライナを非難している。

もし2003年の取り決めがいまも生きているとすれば、今回はウクライナがこれをあえて無視したということになる。

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