郵政グループ3社の上場で盛り上がった市場は一段落。大型IPOが売買代金を独占し全体相場の重しになる場面もありましたが、雇用統計前の手仕舞いも売り出ていた模様。あらためて個別株に資金が回り始めるかどうかが焦点となります。
そこで、決算も一巡する11月9日週の注目ポイントと前週の振り返りを『プロの視点。今、乗るべき銘柄が見えてくる。』を配信する株式評論家・山本伸一さんが解説します。
郵政3社は一段落、需給改善で決算再評価からの買いに期待
まずはこの1週間(11月2日週)の相場動向を振り返り
11月2日週の株式相場は、底堅い展開となった先週の流れから、月替りも重なった月曜日は利益確定売りを浴びると、火曜日の祝日休場を挟んだ水曜日には見直し買いが優勢。木曜日、金曜日と買い進まれており、次第に買い気を強めてきています。
日経平均株価は、先週末の1万9000円台から、月曜日には1万8700円割れとなったものの、水曜日には1万8900円台、木曜日には1万9100円台、金曜日には1万9200円台まで水準を切り上げてきました。
先週金曜日引け後に行われた日銀の金融政策決定会合では、黒田総裁の会見後の円高推移、米国株下落に中国経済指標も振るわず、外部要因軟化で折り返すと、月曜日の株式市場は円高推移とともに見切り売りを誘う格好に。次回以降の緩和期待の後退や日程面の手掛けにくさも手仕舞いを誘いました。
「文化の日」の祝日休場明けとなった水曜日には、休場期間中の米国株高、円安推移を好感した見直し買いが先行。ただ、日本郵政<6178>、ゆうちょ銀行<7182>、かんぽ生命<7181>の郵政3社の大型上場は好スタートを切ったものの、いずれも全市場の売買代金上位に進出。IPOが上値を伸ばした後場に株価指数は弱含むなど、大型IPOへの資金の集中が全体相場の重しとなりました。
また、4日水曜の夜に発表された米国の10月ADP雇用統計では、米民間部門の雇用者数が前月比18万2000人増となり、市場予想の18万人増を上回る内容に。
さらにイエレンFRB議長が議会証言で「今後の経済指標で変わらなければ、12月利上げの舞台は整っている」との認識を示したことが利上げ観測につながり、リスク資産圧縮の流れが強まったことで、米国株安となりましたが、ドル高・円安推移が支援し、株価指数は順調に水準を切り上げてました。
金曜日には、米国市場で米雇用統計に向けて手仕舞い売りが出たものの、為替相場ではドルが底堅く、買い優勢の流れに。資金集中の見られていた郵政3社の調整による資金シフトも追い風となり、日経平均株価終値は1万9265.60円で週末の取引を終えています。
チャート上でも日経平均株価は終値で75日移動平均線(1万9019.93円)、200日移動平均線(1万9249.35円)を奪回しており、一目均衡表でも雲抜け(雲上限:1万8924.21円)が鮮明になるなど、テクニカル指標も好転しています。
郵政グループ3社に資金が集中、一巡後は個別大型株へ
11月2日週の東京市場は決算発表とともに、日本郵政<6178>、ゆうちょ銀行<7182>、かんぽ生命<7181>の郵政グループ3社が11月4日に新規上場という超大型IPO案件の影響で、火曜の祝日休場前の月曜は祝日明けの大型IPOに備えた換金売りなどから、日経平均は400円近く値を下げる展開。
祝日休場明けの水曜日は、注目された大型IPOも好スタートを切ったものの、IPOへの資金シフトや場中の円高推移とともに株価指数は伸び悩む動きをみせました。郵政グループ3社のなかでは、かんぽ生命保険<7181>が初値形成からストップ高まで買われて上昇。公募取得組の換金売りをこなしての人気化でもあり、回転の効いた買いが確認されました。
ただ、全体の物色傾向として、全市場の売買代金上位を日本郵政<6178>、ゆうちょ銀行<7182>、かんぽ生命<7181>の郵政3社が独占。上場初日に約6200億円、2日目には約5400億円と全市場の売買代金の2割程度を占めて、水曜、木曜の2日間は全員参加型の買いを集めました。
個人投資家の資金が郵政グループ3社に集中したこともあって、買い一巡後に弱含んだあとの他銘柄への資金シフトが期待されましたが、中小型株などは利益確定の流れが強まった模様。
郵政グループ3社がいかに盛り上がったとはいえ、日経平均などの指数に組み入れられていないことから、必然的に日経平均構成比率上位の個別大型株に資金が集まりました。
ただ、金曜日は郵政3社に利益確定の動きが強まると、他の銘柄への資金シフトが確認できるなど、郵政上場による需給悪化も一時的なもので、日経平均全体のセンチメントは良好であると言えるでしょう。
日経平均構成銘柄の値動きは?
日経平均株価構成銘柄では、郵政グループ3社のIPO堅調推移で、メガバンクの三菱UFJ<8306>、三井住友FG<8316>、みずほFG<8411>が底堅く、ファーストリテイリング<9983>、ファナック<6954>、ソフトバンク<9984>が好調。日経平均株価を下支えしています。
また、第3四半期決算が市場予想を超過、通期業績予想の増額修正を発表したことからJT<2914>が賑わったほか、富士重工業<7270>、決算評価継続の村田製作所<6981>、郵政グループ3社やJT<2914>の堅調さから、元公社銘柄としてNTT<9432>も物色を集めました。
決算銘柄では、11月2日(月)引け後に決算発表した日産自動車<7201>が人気化。第2四半期決算の増収増益着地、通期業績予想の増額修正を好感した買いを集めました。
また、TDK<6762>も先週10月30日(金)の引け後に第2四半期決算の大幅増収増益着地を好感した買いを集めたほか、米ナスダック上場企業のハッチソン・テクノロジーを買収することも明らかにしており、材料性の面でも注目を集めています。
一方で、11月5日(木)に第2四半期決算で減収減益、通期業績予想の下方修正および減配方針を示した三菱商事<8058>が投げ売りを誘ったほか、同業の三井物産<8031>も売られ、11月4日(水)引け後に下方修正を発表したホンダ<7267>も売りに押されました。
11月5日(木)の引け後に決算発表をしたトヨタ<7203>も上期の経常益は11%増で着地し過去最高益を更新しましたが、通期予想は据え置いたことから、積極的に上値を買っていく動きにはなっていません。
個別銘柄では、決算増額を発表した東海カーボン<5301>、日本製鋼所<5631>、青山商事<8219>、日本コロムビア<6791>のほか、古河電工<5801>、横河電機<6841>、アサヒグループホールディングス<2502>が個別に買われ、月次好調のユナイテッドアローズ<7606>、増額修正のテレビ東京<9413>、NTT都市開発<8933>などが物色を集めています。
軟調だった新興市場は週末にかけて買い戻しの動き
また、郵政3社の上場した11月4日(水)や5日(木)は、個人投資家が新興市場から郵政グループ株への資金をシフトしたことから、マザーズ、JASDAQなどの新興市場では売買そのものが低調になり、AppBank<6177>などの直近IPO銘柄が大きく下げたほか、アクセルマーク<3624>、パートナーエージェント<6181>が10%を超える下げを記録。
換金売りに押される場面もありましたが、金曜になって郵政3社の動きが止まり利益確定の流れが強まると、またAppBank<6177>に買い戻しの動きが見られたほか、ブランジスタ<6176>が全市場の売買代金上位に進出する活況高となり、ミクシィ<2121>、ペプチドリーム<4587>などが個別に賑わう場面も見られるなど、資金回転が確認されています。
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