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PayPay祭で燃え尽きたキャッシュレス化の灯火。カード業界から見る孫正義「5つの誤算」とは?=岩田昭男

PayPayの誤算その2:100億円や20%還元を強調しすぎている

「何かというと、100億円あげちゃう、あげちゃうという。100億円とか20%還元というキーワードを強調するやり方が金権主義的で好きになれません。また、全額返金のばらまき方が尋常ではありませんでした。まるでギャンブル感覚で、同じ人が2回も3回も当たる大盤振る舞いでした」(銀行系カード社員)

「100億円を前面にだして札束で頬を叩いて顧客を取り込もうとするところは拝金主義そのものです。これはギャンブルや投機の感覚であって、私たちカード事業者の地道にやっている仕事のやり方とは全く違います。根本的に違うと思います」(銀行系カード社員)

「同じ人が2度も3度も全額返金されるといったおかしなことになっていました。我慢できませんでした」(銀行系カード社員)

カード業界は手数料ビジネスだから、普通は還元率0.5%出せればよい方だ。頑張っても1%がいいところ、そこに20%還元だとか「100億円あげちゃう」とぶつけてこられても最初から勝負にならない。キャンペーンが中止になったあとも、これらの数字を繰り返していた。こうしたやり方は印象操作を思わせて不愉快という人も多かった。

「基本的に我々と出自が違いすぎます。投資家であれ、ファンドですから、100億円は投機のタネくらいにしか思っていないでしょう。次に儲けるために投資したのだという考え方でしょうね。カード事業者の発想にはないところです」(流通系カードB社員)

ソフトバンクはファンドだから、100億円あげちゃうといった言葉が平気で出るのだろう。1円、2円で血眼になっているカード事業者とはまったく違う世界の人たちなのかもしれない。そう思わせるところが多い。

PayPayの誤算その3:加盟店は家電量販店と一部コンビニだけ優遇され、一般商店はおいてけぼり

秋葉原や新宿、池袋の大手家電量販店と一部コンビニだけにお金が落ちるようにして、他の一般商店には全く恩恵がなかったのです。これは変ですよ。商店の中では不満の声をあげるところも多かったです」(流通系カードB社員)

12月4日のスタート日から家電店は賑わっていた。この時に、私はスカイツリーの下のおしなり商店街でPayPayのスタートを取材していた(墨田区の4つの商店街でPayPayの実証実験を始めるというのだ)。しかし現場に行ってみると加盟店の数は全く増えておらず、商店街には人が集まっていなかった。ビックカメラのお祭り騒ぎは後で知って驚いたが、その熱気は下町の一般大衆には届いていなかった。縁がなかったといえる。

池袋や新宿の大手家電量販店で大騒ぎになって、お祭り状態だった。PayPay側とすると、家電量販店がもっとも分かりやすく、熱心な顧客も多く、さらに、お金の回りもよいとの判断があって、狙い撃ちにしたのだろう。中小小売店では、PayPay側の儲けが見えないから手つかずのまま放っておいたのではないだろうか。

しかし、こうしたやり方をしていては、本当のお客は寄ってこないし、一般の商店も反感を持ったに違いない。

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