世界が財政政策に転換するなか、日銀だけが量的金融緩和を続行
いよいよ財政出動によって景気浮揚を図ろうとするトランプ政権にとって、対中国に対する懲罰的な制裁は、実は内需の喚起を目的としたものであると見るべきです。
一部の政府機関の閉鎖をものともせず、メキシコ国境の壁建設の予算を通そうとしているのも、中南米からの経済難民や麻薬の違法な流入を阻止するだけでなく、内需の喚起もまた狙いの1つにしているのです。
トランプ政権の「アメリカ・ファースト」が起こす波状攻撃に翻弄され続け、完全に方向感を見失っているのは、むしろ日本の株式・債権市場です。
欧州中央銀行(ECB)は、2018年末に国債などの資産の新規購入を打ち止めにして、2019年は現状の低金利政策を続け、2020年から利上げに踏み切る方針を変更していません。
米・欧の中央銀行が、そろって金融引き締めから財政政策に転換しようとしているのに対して、ひとり日銀だけが2019年も引き続き量的金融緩和の続行を表明しています。
といっても、昨年は80兆円規模を60兆円規模に縮小しているので、2019年は、さらに大幅に縮小することは必至です。
つまり、米国とEUが金融引き締めに転換したことで、日本の金融システムの深刻な問題が表面化してきたということなのです。
円高転換によって日銀の債務超過問題が急浮上し、デフォルト危機へ
日銀が量的緩和の規模を縮小せざるを得なくなっている理由は、外圧と言うよりはむしろ、日銀の債務超過が目前に迫って来たからなのです。
確かに、トランプ政権は去年の10月に、日本に対して「為替介入をはじめとする意図的な通貨安誘導を阻止する為替条項の導入を要求する」と表明しました。要するに、「これ以上、日本国債を買い入れて1万円札をばら撒くな」と言ってきたのです。
これを受けて、ドル・円為替レートは、去年11月下旬の113円台から1月3日の107円台まで、なんと16円も円高に振れたのです。
これほど急激な円高を予想していなかった多くの個人FXトレーダーが“死亡”しました。
2019年後半には、「おそらく、1ドル90円台になる」との見方が大勢を占めるようになっています。それどころか80円台にまで視野に入れなければならなくなりそうです。
ウォール街は、去年のうちから警告のシグナルを発しており、「この日」に備えるべく準備してきました。
つまり、すでにECBは量的緩和の終了を宣言しており、その上、日銀の債務超過リスクが視界に入ってくると、米国債売却の動きが表面化するようになって米国の債券利回りが押し上げられるからです。
これは、米国の財政破綻にストレートにつながってきます。
さらに深刻なことは、今まで警告されてきたように、日銀の債務超過懸念が現実の問題となってきたことによって、日銀によるETF(上場投資信託)の買い付け総量が細り、官製バブルの崩壊が避けられないことが確実になったということです。
同時に、日銀による国債の買い入れが困難となれば、もはや日本の金融市場に「打つ手なし」となって長期金利が暴騰、結果、国債の利回りが払えなくなって、日本の財政は、いよいよデフォルト危機に突入するというわけです。