2019年10月の消費増税が現実になれば、結果的に税収全体ではマイナスとなる。政府もそれを理解しているだろう。つまり消費増税の目的は財政再建ではないのだ。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』矢口新)
※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』2018年11月12日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。
日本の資産はプラマイゼロ。まさに債務国に落ちる瀬戸際にいる…
消費増税の副作用を消すために税金投入?
2019年10月に消費税率が2%引き上げられると、国民が支払う税金は約5.6兆円増えるとされている。一方で、消費増税に伴う景気悪化や所得減が予測されるため、政府内で10兆円から15兆円の総合対策が検討されているという。
しかし、増収分以上に歳出を増やせば、財政赤字はさらに拡大する。
消費増税で財政が悪化するとすれば、何のために消費税率を引き上げるのか? 以下に報道記事の要点だけを引用する。
日銀の試算では2%増税に伴い国民が支払う税金は約5.6兆円。
既に決まっている軽減税率や幼児教育無償化などの恒久的な対策で2.4兆円程度が国民に還元される。さらに時限的ながら、前回も実施した低所得者支援金による所得還元なども合わせると、ネットで支払う税金は2.2兆円に圧縮される。
出典:同上
キャッシュレス決済によるポイント還元やプレミアム商品券、自動車減税などを加えれば、1兆円台の負担で済みそうだ。
出典:同上
「国民所得目減り額の規模にかかわらず、10兆円単位での財政出動が選択肢として浮上している」と明かす。ただその場合でも、単年度で10兆円規模の財政支出を実行するのではなく、複数年に分割して執行する方式が模索されているもようだ。
出典:同上
この選択肢のたたき台として、内閣官房参与の藤井聡・京都大学大学院教授が提言している10-15兆円規模の経済対策構想があるという。
出典:同上
安倍晋三首相は今月5日の参院予算委員会で、防災・減災、国土強靱化のための緊急対策について「消費税対応にかかる2019年度、20年度に講じる臨時・特別の措置を活用する」と述べた。
出典:同上
電力・空港・河川など重要インフラを緊急点検し、必要な対応に3年間で集中的に取り組む方針を示してきた。
出典:同上
人命を救えるだけでなく、経済的な打撃も相対的に圧縮できる。
出典:同上
公共工事の推進には人手不足という課題が立ちはだかる。別の政府関係者は、ICT建設機械など先端技術を活用した次世代インフラメンテナンスに資金を付けることが、将来の成長基盤につながるとみている。
出典:同上
キャッシュレス決済、自動車減税、公共工事、先端技術活用、人手不足等々、恩恵を受けそうな分野のキーワードがちらほら見受けられる。
それにしても、増収分以上に歳出を増やせば、財政赤字はさらに拡大する。消費税率の引き上げには、財政再建に優先する何かがあるのだろうか?