体感では人手不足なのに、それでも実質賃金が上がらない理由
もっとも、現在の日本は生産年齢人口対総人口比率が低下していっているため、各業界で人手不足が広まっていくことは確実です。と言いますか、広まりつつあります。
それにも関わらず、なぜ実質賃金がなかなか上がらないのか。もちろん、経営者が賃金引き上げ(十分な賃金引上げ)に乗り出せないためです。
それでは、なぜ経営者は賃金を引き上げないのか。理由は複数ありますが、結局のところ最大の理由は国民の間に広まった「デフレマインド」なのだと思います。
誰もが「値上げをできない」と思い込み、結果的に上昇する人件費の吸収ができない。人件費上昇を受け、企業が顧客側に「値上げ」をお願いしても、「仕事を切られるのではないか」と怯える。あるいは、実際に顧客側が値上げを受け入れない。
とはいえ、生産年齢人口比率がこのまま下がっていけば、最終的には「実質賃金が上昇する」か「生産ができなくなる」のどちらかに行き着きます。
当たり前ですが、「生産ができなくなる」産業が増えていけば、我が国は発展途上国化します。
だからこそ、デフレマインドにとらわれる必要がない「政府」が率先してモノやサービスを「高く買う」必要があるわけです。政府が公共サービスの人件費を率先して引上げ、生産者を雇用していくと、実質賃金の上昇が伝播します。
安倍政権は「最も国民を貧しくした政権」になるのか
それに対し、安倍政権が推進する緊縮財政や労働者派遣法改正、外国移民受け入れ拡大は方向性が「真逆」です。
現在の安倍政権の政策が継続する限り、日本国民の実質賃金は上がらず(上げられず)、国民が貧困化し、最終的にはモノやサービスの生産ができなくなっていきます。すなわち、発展途上国化です。
この上、安倍政権は2017年4月に消費税を再増税するという姿勢を崩していません。現在の環境下で消費税を増税すれば、2014年4月同様に一気に実質賃金が下落することになります。
日本の国民の貧困化や発展途上国化を食い止めるためにも、消費税増税を含めた安倍政権の緊縮財政路線に「いい加減にしろ!」という声を叩きつけなければならないと思うのです。
このままでは、安倍政権は憲政史上「最も国民を貧しくした政権」になることが確実なのです。
『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2015/11/10号より
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