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男前ザッカーバーグ「5兆円寄付」の仰天スキームと秘めたる志=冷泉彰彦

ザッカーバーグ氏の「失敗体験」と、内に秘めたる志

実は、このNPOの前にも、ザッカーバーグ氏はまとまった金額の寄付を行って話題になった事がありました。それは、2010年のことで、私の住むニュージャージー州の「ニューアーク市」における「公教育のレベルアップ」のために、彼は100ミリオン(約122億円)を投じたのです。

ニューアークというのは、ニューヨークのすぐ西にあって、巨大国際空港があることで知られる街ですが、空港から車で10分走った市の中心街(ダウンタウン)から北にかけては、かなり荒廃しており、貧困地区もある一方で、東海岸でも有数の治安の悪い地域という汚名も着せられているところです。

このニューアークにどうして、ザッカーバーグ氏が目をつけたのかというと、当時は黒人で非常に人気の高いコーディー・ブッカーという人(現在は連邦上院議員)が市長として改革に乗り出していたのと、同市出身で、それこそ貧困地区から自分の努力で地位を築いたクリス・クリスティ知事という共和党のホープが「超党派で取り組む」という状況が、彼に期待感を持たせたと考えられます。

実際に、このプロジェクトに関与した3人は、ザッカーバーグはFBの業容拡大と上場を成功させましたし、ブッカーは前述の通り市長から上院議員へと活躍の場を移し、クリスティは「泡沫ではあるが大統領候補として認知」を得るところまで行っています。

3人とも、ある意味では「全国的な認知を得る」ステップとして、この「ニューアーク市の教育改革」に取り組んだはずでした。

ですが、5年後の現在、このプロジェクトについては「失敗」の烙印が押されています。貧困地区の学区では、依然として「高校ドロップアウト率」は高止まりしていますし、鳴り物入りで開設された「チャータースクール」にしても、中退率は学区全体より改善しなかったのです。

その原因としては、100ミリオンの基金の中から相当の部分が「教育コンサルタント」と「教職員組合」に流れたからだと言われています。別段、詐欺にあったとか、違法性のあるカネの流れがあったのではないのですが、プロジェクトを「当初の取り決め通り」運営して行ったら、成果が出る前に、コンサルタント料と教員の人件費で「食いつぶされ」てしまったというのが正しいようです。

ザッカーバーグ氏は、この「苦い経験に学んだ」として、「中途半端なカネでは社会は変えられない」ということから、今回の大規模なNPO設立という構想に至ったとしています。

収益事業に結びつかなくとも「遠い地平線」を目指して

もう一つは、FBのこの間の社会的影響力の拡大というファクターです。一つのSNSとして、ネット上のサービスを提供する存在を超えて、今やFBというのは、地球規模の擬似社会になっているわけです。

そのFBが今後も健全な成長を続けていくには、実社会とFBの空間とが「良い形で共存」していくなどという「後ろ向きの発想」ではダメで、FBあるいはネット、あるいはコンピュータの活用ということが進むことが「明らかに実社会の問題解決になる」ということ、つまり「文明のレベルで人類に貢献する」ということが必要になってくるわけです。

そこで、例えばニューアークで失敗した「公教育におけるドロップアウトの追放」というようなテーマは、正に中長期的にFBないしネットのカルチャーが生き残っていくためには、取り組んでいかなくてはならないテーマだと考えたのではないでしょうか?

例えばですが、FBというサービスに参加するためには、コンピュータリテラシーが必要なわけですが、それ以前としてリテラシー、つまり識字ということが大前提になっているわけです。

となれば、FBがある種の限界を超えてユーザーを増やしていくためには、識字、つまり公教育における「読み書き指導」というものが現在以上に地球規模で「結果を出していく」ことが求められるわけです。

そのようなスケールの大きな、そして直接的には収益事業には結びつかない「遠い地平線」の話は、NPO、しかも大掛かりなNPOでやっていかなくてはならないということ、そんな思いも込められているのではないでしょうか。

Next: 長期的かつノンプロフィットなFBの存在意義~プリシア夫人の想い

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